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第211話 山上の砦

「何もないな……」

オレたちは初めの城の周囲を取り囲む山脈の一角に築かれた山上の砦に入った。そこには人っ子一人おらず、モンスターもおらず、ただ放棄された構造物があるだけだった。

「そうだね。この砦はそもそも意味がなかったんだ。砦の内も外もモンスターのテリトリーなんだから」

とゲネオスが言った。


思い返せばここはツギノ村に行く前に進むのを断念した道だ。砦は初めの城から外界へと繋がる唯一のルートとなっている。強力なモンスターから人々を守るために砦が築かれたのだと思っていたが、そのモンスターが出る元凶が内側にいたとは!


エルフの王は詳しく地理を教えてくれたので、イマミアンドから2週間程度の旅でここまでたどり着くことができた。

エルフの王は別れ際にこんなことを言っていた。

「余はもはや王ではない。国土も失い、国民もおらぬ。今や王となれるのは其方たち人間だけなのだ」

エルフの王はオレの方に振り返っていった。

「サルダドよ、魔王を倒した後、其方が王となってはどうか?」

オレは予想外の言葉にしばらく返事ができなかったが、このように答えた。

「オレは、、、多分王には向いていない。けど、魔王は倒したい。魔王の作る世界がどんなものであるかはイマミアンドを見て分かった。けどそれだけじゃない。こんなにも長い間オレも含め人々が騙され続けてきたことに腹が立つ」

エルフの王はもはや何も言わずオレたちを送り出した。


オレたちはエルフの隠れ里を後にした後、一旦イマミアンドに戻った。

丁度南の大陸からキューマとカメロスが表敬のために派遣されてきており、オレたちはしばし再会を喜び合った。

キューマは自身の判断でカメロスをこの地に残し、オレの後任としてモンスター掃討に従事できるようにしてくれた。

イマミアンドの新政府の人材もだいぶ厚くなってきたので、オレたち三人は再び長期の旅(還ってくることはないかもしれない)に出ることが可能となったのである。

オレたちはイマミアンドを出立する際、カメロスに必ずエルフの隠れ里を訪ねるように言い含めた。


「さあ、ここから初めの城まではもうすぐだ。このまま一気に行くよ?」

ゲネオスが言い、オレとパマーダは従った。

砦から平野への道は初めてだったが、その先は勝手知ったる土地が広がっている。ここからだと初めの城もツギノ村もハッキリと見ることができた。

体内時計では2年ぶりの故郷、外界では12年もの時が流れている。

オレは懐かしさと緊張感が入り交じった不思議な感覚のまま、山道を下っていった。

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