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第210話 光の家

その夜、パマーダは深夜に目を覚ました。

エルフの王とその僅かな家臣と食事を共にした後、三人パーティはそれぞれ部屋をあてがわれ、暖かく快適なベッドの中で疲れを癒やすことができた。

目を覚ましたのは、誰かに呼ばれたような気がしたからだ。これは夢の中でのことだったのだろうかと自問したが、すぐにそうではないことが分かった。その声は目が覚めた後の今でも感じられたからだ。

それは女性の優しい声だった。実際に声が聞こえるというより心に直接話しかけられている感じがした。その声は部屋の外、いや、城の外から聞こえてくるようだった。


パマーダはゲネオスやサルダドを連れていこうか悩んだが、思い切って一人で城を出た。声のする方に進んでいくと、城のすぐ側の居住区の中にぼうっと光っている家があった。

(確かここは既に朽ち果てた家があったはず)

昨日城に入る際に目にしたのでパマーダはなんとなく覚えていた。しかし今は壁も屋根もしっかりと組み上げられている。

パマーダは思い切ってその家の中に入った。


家の中はぼんやりとした光で満たされていた。光源が見当たらないので、どのような仕組みで部屋を照らしているのかは分からない。

家の中に入るとすぐに、さきほどの声はより明瞭に聞こえるようになった。


貴女(あなた)はどなた? パマーダというのね。まさかゲネオスの奥様かしら? あの子は遂に人間の娘さんと結婚したのね? え? 違う? それは失礼しました。陛下も以前ほど人間との交わりを(いと)わなくなられました。マゴス様もお戻りになられたらきっと仲の良い兄弟になれるでしょうに。え? マゴス様はお亡くなりに? そうですか。そんなにも年月(としつき)が流れてしまっていたのですね」


「パマーダ。素敵なお名前ね。パマーダ、あの子をよろしくお願いします。あの子は本当に心の優しい子でした。だからこそ、このエルフの里で引きこもり続けることができず、戦いの道を選んだのですから。けどあの子には無鉄砲なところがあるでしょ? 本当に無茶をして。この隠れ里でもしょっちゅう怪我をしていましたわ」


「パマーダ、あの子を支えてやってください。ささやかではありますが私からの贈り物です。私はもうこれを着ることはないでしょう。私はあの子を支えられるほど強い母ではなかったのです。さあ、パマーダ、こちらへ」


家の奥の壁が石と石の継ぎ目から二つに分かれると、その先にはこぢんまりとした部屋が現れた。そこには首のない胴体だけの彫像があり、そこに銀色に輝くローブのようなものが着せられていた。

パマーダが近づいてそれをよく見てみると、ローブと思ったものは小さな鎖をつなぎ合わせた鎖帷子(くさりかたびら)だった。

パマーダはそれを外して自身の肌衣(はだぎぬ)の上に着けてみた。金属でできているはずなのに絹のように軽く、身に着けていることを感じないほどだった。

「この上に法衣を着てもまったく問題なさそうね」

とパマーダは思った。


先ほどの声はもう聞こえなくなっていた。パマーダは祈りの言葉をつぶやき、手で印を切ると、また一人城に戻っていった。


第12章 エルフの隠れ里 〜完〜

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