第209話 ザ・プラネット・クラッシャー
「余も元は王子であった。兄弟の中では末弟で、誰も王になるとは思わなかっただろう。余自身もそのようなことは考えたこともなかった。しかし多くの兄が討ち死にし、残ったエルフを守るためにはこの『石工』の能力が必要だったのだ。このような山のそのまた奥に、敵の攻撃に耐えうる石造りの城を築くことは、この能力無しにはできまい」
「先のスラッシュは人間が鍛えた刀にエルフの力を付与した。このミョルニルはエルフ自らの手で、エルフの持つ技巧のすべてを注ぎ込んで作り上げたものだ。ゲネオスよ、其方はミョルニルがどのような武器であるか知っておるか?」
エルフの王はオレに問いかけた。
「え? そうだな。投げればモンスターをくっつけて戻ってきたり、逆にオレたちを運んだりもできる。どうもオレ以外の人間には使えないようだ。とてつもなく重く、オレ以外の者が手にしたときは大火傷を負っていたということもあった」
最後のところはアクリスのことを思い出しながら話した。
「ミョルニルは重い。とてつもなく重い」
エルフの王はそう言った。
「ミョルニルの本質はその重さにある。余はその頃には魔王を倒す秘策を持っておった。スマッシュで指輪を斬り取り、ミョルニルでそれを押し潰すのだ。だからミョルニルはとてつもなく重くする必要があった。どのような物体よりも重く、そう、あの空に輝く星よりも重く。余はできあがった武器を星砕きのミョルニルと名付けた」
オレが手にしていたミョルニルは、その言葉に反応するかのようにブンッと振動した。
「しかし魔王を倒すには今ひとつ足りないものがあった。ミョルニルで力の指輪を壊そうとしても、その反対側でミョルニルの力を受け止める土台が必要なのだ。余はそれを作り出すことができなかった。それは指輪を切り取ったその場になければならないからだ。その旅の魔法使いは『なんとかいたします』と言って、この土地を離れた。ミョルニルはそのとき魔法使いに託した。この魔法使いが誰なのか、サルダドよ、其方なら分かるであろう?」
「つまりオレのご先祖様ってわけか?」
エルフの王が頷いた。
「人間とは素晴らしいものだな! 時にエルフが思いつきもしないようなことを考え出しよる! その魔法使いはなんと魔王の本拠地へと向かったのだ。大工に混じって魔王の城を築き、自らもその側に住んで、そこにミョルニルを隠したのだ。自身の館には魔法をかけ、魔王の視線を反らせた。それからどれほどの時が流れたであろう。余がひたすらこの城に籠もっている間、その魔法使いの子孫は何世代も代替わりを繰り返しながらミョルニルを伝え、決してその力を魔王に奪われることはなかったのだ」




