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第208話 短剣の名付け

「ところでゲネオス、其方は確かエルフの短剣を持っておったな? それはどのようなものか?」

エルフの王は急に話題を変えた。

「スティングのことですか?」

ゲネオスは腰に吊った短剣の鞘をエルフの王に見せた。

「抜いてみてくれ」

ゲネオスがスティングを抜くと、それは青白い光を放ち、そして何事もなかったかのように元の銀色の刀身に戻った。

「ふむ、良い剣だ。しかし名が悪いな。それではオークのような下等なモンスターを警戒することしかできないだろう。エルフの剣は名付けによって本来の力を発揮する。少しその剣を預からせてもらえんかな?」

ゲネオスは鞘ごと短剣を王に手渡した。


エルフの王はすらりと刀身を抜いた。そして顔の前に立てて構えてから、短剣に向かって語り始めた。

「剣よ剣。其方(そなた)の名前を思い出せ。忘れたとは言わせぬぞ。突き刺す(スティング)わけではないだろう。貫こうとも魔王は死なぬ。切り取れ指環。そう、其方の名前は切り裂き(スラッシュ)だ!」


短剣は目を開けてはいられないほど強く白い光を発した。そしてその光が弱まって元の銀色に戻ったとき、刀身の見かけ自体は変わらないのに、そこから感じられる存在感(オーラ)が、以前のスティングとは全く違うことに気づいた。


「元々この短剣は東洋の刀鍛冶がこの地を訪問したときに鍛えた刀だ。よく見ると少し刀身が反っているだろう? ()の地の刀の特徴らしい。指でそっと触れただけで血がにじみ出し、そして傷を負っていることにも気づかぬほどの鋭い(やいば)。それを見て余は興奮した。早速その刀を借り受け、エルフの力を付加することでその短剣ができたのだ」


ゲネオスはスラッシュと名を変えた短剣を受け取り、再びそれを腰に吊した。

「その剣がどうしてこの地から失われたのかは分からぬ。おそらくここを出立したエルフがその価値に気づかずままに持ち出したのであろう。しかしこのタイミングで再び見出されることになるとは。いや、あるいはその時がきたから剣自らしかるべき持ち主のところにやって来たのか……」

エルフの王の言葉は自分自身に語りかけているようにも聞こえた。


エルフの王は次にオレに向かって話しかけていた

「余がミョルニルを鍛えようと思ったのも、思えばある人間の存在がきっかけだった。人間の魔法使いがこの城を訪れたとき、その者が余と同じ能力と身につけていることに気づいたのだ。そうだ、サルダド、其方が持つ『石工』の能力だ」

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