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第207話 我が家の話

エルフの王の話は続く。

「こんな見方もできる。サルダドよ。そなたは初めの城の城下町の出身だったな。生まれてからこの(かた)、国王の(だい)が変わったということがあったか? 其方(そなた)の親やそのまた親の時代を含めてどうだ?」


そう言えばオレの知る限り国王が亡くなって世嗣(よつぎ)が新たな王に即位したという話は聞いたことがない。そんな話は両親や祖父母からも聞いたことがなかった。一人の王がそんなにも長い期間統治を続けることができるのだろうか?


オレの頭の中である仮説が固まりつつあった。しかしその仮説はあまりにも突飛(とっぴ)であったので、オレはなおも判断できないでいた。すると、ゲネオスがエルフの王の問いに答えてしまった。

「つまり陛下は、初めの城の(あるじ)こそが魔王であるとおっしゃりたいのですね?」


建物が雲の下に入ったのか、急に部屋の中が暗くなった。さらに一筋の強い風が壁の隙間から入り込んできて、燭台に灯された炎を揺らした。エルフが建てた建築物はそのような隙間を決して許容しないはずなのに。


エルフの王が口を開いた。

「そのとおりだ。そしてサルダドの先祖はまさにその魔王の本拠地にミョルニルを隠したのだ」

「そんな。サルダドの家はお城のすぐそばにあったのよ。それで見つからないなんてことはないわ」

パマーダが言った。

「パマーダよ。其方はサルダドの家に行ったことがあるか?」

パマーダは一度は行こうと思ったが、なんとなく気分が向かず途中で宿屋に戻ったことを思い出した。


「サルダド、おぬしの家には人が近付かなかったということはないか?」

エルフの王の問いに、オレは悲しい過去を思い出した。城下町の魔法学校に通い始めたオレは、その年同級生を自宅に招いて誕生日パーティーを開こうとしていた。しかし同級生は皆来ると約束していたのに、当日になって現れたのは一人だけだった。オレは両親とその同級生の4人で誕生日のお祝いをしたが、さすがに気まずかったのかその同級生は早々に我が家を退散した。


「気づいたか? そうだ。姿隠しの魔法だ。普通の人間にはなんとなく行きたくないと感じるだけかもしれない。しかし魔王クラスになるとまったく見えなくなっているだろう。自分の城下町だというのにその一部が縮まって、そんな家は存在しないかのように感じているのだ。この城が人々の目から隠されているのと同じように」


オレの生まれ育った街。重々しくそびえ立つ城郭は毎日目にしていた。そんな目と鼻の先に魔王がいたとは。

オレはふとマスキロが家で寛いでいたことを思い出していた。この姿隠しの魔法は、対象によって効果が変化し、あまり効果のない者もいるようだ。マスキロにはこの魔法はほとんど効果がなかったということか。

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