第204話 遺跡
これ以上馬では行けないというところに来たので、オレたちはガイドに頼んで馬を預かってもらうことにした。そして、3日後に迎えに来てもらい、そのときまでにオレたちが下山していなかったらさらに3日後に迎えに来てもらうことにした。
ガイドと別れてからは、オレたちは徒歩で山を登った。半日ほど歩いて、空気が変わったのを感じた。ゲネオスやパマーダの表情を見て、二人も同じことを感じたことが分かった。
「進んでみよう」
先頭に立ったゲネオスがどんどん進んでいく。あまりにも迷いがないのが気になったが、道に迷っても最悪なんとかなるだろうと高をくくって、そのままついて行くことにした。
オレたちは不意に城壁の上に立っていた。そこは山の尾根の上にずっと続く城壁で、さらに上を見上げるとそこにはこんな山の中には似つかわしくないほどの巨大な城が建っていた。尖塔が左右に2本あり、その間に挟まれた城も数多くの銃眼が備えられていた。城壁は反対側の尾根沿いにも続いていて、城壁の先には櫓が組まれていた。こちら側の城壁も下の方には櫓があった。
二つの櫓と城との間に囲まれた三角形の斜面には多数の段々畑があって、その一番下の段では人が見えた。上の方の畑にも作物が育てられていたが、実りの時期はまだ遠そうだ。ざっと目算だが、一番下の畑と一番上の畑では1000メートルほどの標高差がありそうだ。
「これは……、いや、こんなことは前にもあった。そうパランクスの砦に初めて足を踏み入れたとき……」
とそこに、一人のエルフが立っていた。最初からいたのか、オレたちが城壁に現れてから近づいてきたのか、あまりの気配のなさにそれは分からなかった。
そのエルフはオレたちが尋ねるよりも前に口を開いた。
「私は陛下にお仕えする者。陛下の御指図により皆様を迎えに参りました」
エルフは見かけでは年齢が分からないことが多いが、そのエルフは肌つやこそ青年のそれと変わりないが、髪は真っ白で、その物腰や話しぶりからはかなり高年齢のエルフと思われた。
オレたちは簡単に自己紹介をしたが、そのエルフは「存じております」と早々に話を打ち切って、城壁の上の方へとオレたちを誘った。ただゲネオスが話しているときは、何か口を開こうとしたが途中で思いとどまったような仕草をした。
「陛下とおっしゃいましたよね? この城には一体誰が住んでいるのですか?」
ゲネオスが尋ねると、そのエルフは少しショックを受けた顔で答えた。
「言うまでもありません。全エルフの王です」




