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第201話 相討ち

マスキロは敵の両肩を押さえつけたままヴラカスに語りかけた。

「面白いではないか。ハーフ・エルフのワシが最も得意とする魔法と、グレーター・デーモンが愛用する魔法がまったく同じものであるとは。しかしこのようなファイヤー・ボールを、そなたは見たことがあるか?」

マスキロは顔をしゃくって上方に視線を促した。ヴラカスも上空を見上げ「ウッ」と(うな)った。


そこには城を(おお)い尽くさんばかりの巨大な火の玉が浮かんでいたからだ。

「ワシ自身が不死(インモータル)でないと悟ったときから、少しずつマナ・ストーンに貯めてきたマナだ。やがてマナ・ストーンの姿を目につかないように隠し、杖の形にしてからも日々蓄え続けてきた。ワシは人間のような伝承の力を発揮することができなかった。しかし何百年もの間、ワシは力を溜め続けた。人間が何代もかけてそうしたように。サルダドの先祖がそうしたように。今こそその力を解放する時だ!」


ヴラカスはマスキロの手を逃れようと再度もがいたが、今やマスキロはその若い筋肉を限界まで張り詰めながら少年を押さえつけている。実際にはとてつもない力と力のぶつかり合いがそこにあったのかもしれない。


「この魔法こそがワシとお前の最後にふさわしい。墜ちよ! 火の玉よ! 我らの頭上へ!」

「マゴス! このままではお前も死ぬのだぞ!」

「構わん! どうせマナ・ストーンの力を解放すれば、ワシの寿命は尽きるのだ」


ヴラカスは悲痛な表情を浮かべた。マスキロはそれに対して微笑みを浮かべた。

「ワシは短命(モータル)のエルフとしてこの世に生を受けた。なかなか受け入れられなかった。しかしある時を境にいかに自分の人生を燃やし尽くすかを考えるようになった。そう、人間のように!」


巨大なファイヤー・ボールがマスキロとグレーター・デーモンに向かって、初めはゆっくりと、最後には光の速さで墜ちていった。



オレたちはミョルニルの力で空中を飛んでいた。

城の方を振り返ると強烈な光と、そのごく(わず)か後に衝撃波が襲ってきた。オレたちは空中でバランスを崩しながら吹き飛ばされていったが、オレはなんとかゲネオスとパマーダを落とさないよう全身に力を込めた。


イマミアンドの街路に無事降り立ったとき、すべては終わっていた。

「マスキロ、今回ばかりはボクたちを巻き添えにはしなかったんだね」

ゲネオスがぽつりと言った。


マスキロ、真の名をマゴスといったハーフエルフの魔法使いは、数百年にも及ぶ旅路の果てに、次なる世界に旅立っていった。


第11章 イマミアンドの人々 〜完〜

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