第198話 メルーの戦い
メルーはゲネオスたちが大階段を登り、その先の玉座の間に入ったのを扉が開いた音で確認した。
あらためて周囲を観察すると、大広間には前方のテラス、後方の大階段に対し、左右に扉がある。扉の先は階段になっていて、下の階へと続いているはずだ。
先ほどの戦いの音を聞いて、じきに新たなモンスターがこの部屋に現れるだろう。
メルーは右の指と左の指に嵌めた指輪をこすり合わせるように動かしながら、呪文の詠唱を行った。
「この子を出すのは魔法学校以来ですわね。あのときはダスカーと力を合わせてもほんの子どもの合成獣しか出せなかったのですが……」
そこに現れたのは鷲の頭と前足と翼とを持ち、胴体はライオンであるグリフォンだった。しかし身体はライオンのそれよりも大きく、床に座った状態でもその頭部は人間の頭よりも高い位置にある。
左右の扉が開いて、オークの戦士や人間の戦士、それに竜頭の戦士などが大広間に姿を現した。
「あれはなんだろう?」
見かけはオークのようだが、人間よりも大きく、腕の太さは人間の倍もありそうなモンスターが斧を振り回しながら突進してきた。
グリフォンはモンスターを見ると、一刻の猶予も与えずそれらを攻撃し始めた。爪で切り裂かれ、嘴で貫かれ、モンスターたちはあっという間にグリフォンに屠られていった。
「痛っ!」
メルーは自分の右腕をさっと後ろに引いた。そこには嫌らしい眼をしたオークが一体、血で濡れたショート・ソードを持って突っ立っていた。グリフォンの攻撃をすり抜けてまっすぐメルーに向かってきた者らしい。
メルーの右腕からは血がしたたり落ちたが、メルーの声を聞いてすぐにとって返したグリフォンにより、オークは一瞬で頭部を吹き飛ばされた。
大広間のモンスターが一掃されると、グリフォンはガツガツと今倒したばかりの獲物を食べ始めた。グリフォンは大食漢なのだ。
その間メルーは腰から細いベルトを抜き取り、右の脇の辺りを締め上げて出血を止めた。
「まだやれる」とメルーは思った。
しかしグリフォンは急に怯えたような声で鳴き始め、メルーの前にしゃがみ込んでしまった。そしてその顔をしきりに動かし、メルーに何かを促した。
「え? どうしたの? 乗れというの?」
グリフォンは何度も首を振った。
「ゲネオス様たちが玉座の間に向かわれてから、まだ四分の一時間も経っていないわ。どうして……」
大階段を見上げると、魔法の心得があるメルーは玉座の間から溢れ出してくる異様な雰囲気に気づいた。
メルーはグリフォンに騎乗し、グリフォンはすぐにテラスから空に向かって飛び立った。その直後、大広間とその前面の建物が吹き飛んだ。メルーはそれを上空から眺めていた。




