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第189話 思い出のレストラン

「宿泊所に戻る途中、とても良い匂いがしてきました。カレーの匂いです。匂いは一軒のレストランからしてきました。私たちは従者(じゅうしゃ)とともにそのレストランに入りました」

アンモスはオレたちの目を(うかが)った。

「もうお分かりですね。皆さんがお泊まりになった宿にあったレストランですよ。店の名前までは伺っていなかったので分からなかったのです。そのことが分かるのは食事をしてしばらく経ってからでした」


「その店のカレー料理は大変美味しく、『旅の恥はかき捨て』ということもあって、私たちはエルフにはあるまじくおかわりをすることを止められませんでした。その後料理長が挨拶にいらしましてね。そこでゲネオスさんたちからプエルトでとても美味いカレー料理店があったことを伺ったことを思い出したので、ひょっとしたらと尋ねてみました。すると料理長の目の色が変わりました。

『あなたたちはゲネオスさんたちのお知り合いだったのですか?』

その料理長はすぐにボーイを呼んで、

『すまないけど、コシネロさんのところにひとっ走り行ってきてくれないか』

とおっしゃるではありませんか。しばらくしてレストランに一人の紳士が姿を現しました。その人こそがまさにプエルト艦隊総督のコシネロ卿だったのです」


アンモスは話を続けた。

「コシネロ卿は大変気さくな人で、店に入るや私たちがいるところにやってきて、テーブルを共にすることになりました。周りには一般のお客さんもいて、中にはコシネロ卿に話しかける客もいたのですが、コシネロ卿はそれにも(いと)わずいちいち挨拶を返しておられました。そのテーブルでコシネロ卿はゲネオスさんたちの消息を事細かに質問されました」


「翌朝交渉のため、私たちが再び評議会を訪れますと、そこには総督の正装に身を包んだコシネロ卿がいらっしゃいました。その後の交渉は大変スムーズで、すぐにプエルト艦隊の救援派遣が決まりました。後から聞いた話ですが、艦隊の半数以上はコシネロ卿が保有もしくは雇い入れた船だったということです」


オレたちがコシネロの方に目をやると、コシネロはまだ人々に囲まれて談笑をしていた。

「10年の間に一番変わったのはコシネロかもしれないな」

とオレが言うと、

「まことに人間とは恐ろしい。エルフが100年かかることをほんの10年で成し遂げてしまうのだから」

とマスキロが相槌(あいづち)を打った。


「しかし皆さんはまたどこかへ旅立ってしまわれるのでしょうね?」

アンモスの問いにオレたちは皆(うな)いた。もちろんベストのタイミングでノトスに戻ってきたことは理解しているし、逆にオレたちが偶然ここに来なければ、果たして街はプエルト艦隊がくるまで持ちこたえられたのか、また間に合ったとして、ノトス・プエルト連合だけでノトスを防衛できたかは微妙なところだ。


しかしオレたちが10年間にも渡る時の歪みの塔での修行で、自らの肉体と精神を大きくレベルアップさせた目的はハッキリしている。

オレたちは再びイマミアンドを目指すことにした。

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