第182話 ドラゴンライダー討伐
これは後で分かったことだが、その日オレたちが討ち滅ぼしたワイバーンは10体にも及んだという。
ドラゴンの亜種とはいえ、ワイバーンは極めて強力なモンスターであり、その入手や育成にはとてつもない困難と歳月を要する。
これは敵にとっては大損害であり、オレたちにとっては歴史に刻まれるほどの大戦果だった。
ワイバーンが倒されるのを見ると、モンスターは次々に戦線を離れ、海岸目指しててんでバラバラに逃走を開始した。
オレたちにそれを追いかける余力はなかったけれども、可能な限り遠隔魔法や弓矢を使って敵の数を減らす努力をした。
「サルダド! こっちだ! 援護してくれ!」
急にゲネオスの声がオレの耳に飛び込んできた。
素早く声のした方に目をやると、そこには竜頭の戦士がゲネオスや数人の戦士たちを前に、たった一体で互角の戦いを演じていた。
竜頭の戦士は身長が2メートルほどもある。オーガーやトロールよりは小さいが、その攻撃のリーチは想像以上に長く、人間と対峙するときの倍の距離を取らねば攻撃をかわすことができなかった。目測を誤ったエルフが、胴を払われて吹き飛んでいった。
「ワイバーンに騎乗していたやつだ! こいつ、強いぞ!」
ゲネオスが敵の剣を間一髪のところでかわしながら叫んだ。
「加勢する! 手負いの者は離れろ!」
オレはミョルニルを抱えてジャンプし、頭上から竜頭の戦士を狙った。
頭部への攻撃は確かに手応えがあったが、肉というよりは金属を叩いているような感触だった。かなりのダメージを与えたはずだが敵はまだ戦意を失っておらず、ギロリとオレを睨み返した。
オレたち以外の戦士は結局戦線を離脱し、その後はオレとゲネオスの二人で対処することになった。
しかし彼が振るう剣の剣筋は知性と経験に裏打ちされていて、二人がかりでもなかなか隙に撃ち込むことができなかった。
そこへ不意に巨大なファイヤーボールが飛んできた。
その爆発に巻き込まれ、竜頭の戦士だけでなく、オレもゲネオスも何メートルも吹き飛んだ。
起き上がってファイヤーボールが飛んできた先を見ると、マスキロが立っていた。
「ふふふ、サルダド、見事な魔法防御力だな」
味方を巻き添えにするファイヤーボールはマスキロの十八番ではあったが、さすがに戦いの終盤でくらうとこたえる。しかしオレはハハッと笑っただけで、言い返す元気もなかった。
ゲネオスもすぐに起き上がってきた。しかし竜頭の戦士が再び立ち上がることはなかった。




