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第173話 ノトス防衛戦争

「城のことは分かった。しかし住民はどうだ? エルフはノトスの街を去り、そしてクレーネからも撤退していた。エルフに対する不信はそう簡単には消えぬのではないか?」

とマスキロが尋ねた。エレミアは答えた。

「私たちの弱みをためらわずにおっしゃいますね。ええ、そのとおりです。私たちエルフは数百年もの長きに渡り、興復(こうふく)を試みさえしませんでした。そんなところにエルフが帰ってきて何をするのかと」


砂塵(さじん)の中から私たちの集団が姿を現したとき、初めノトスの人々はあまり良い顔をしなかったように思います。しかし私たちは付き従ってきたくれたハーフエルフや人間を合わせたとしても、せいぜい二千人程度のグループに過ぎません。それに私たちが本拠を構えたのは廃墟となっていた城跡でした」


「そして幸か不幸か私たちが撤退した頃のことを覚えている人はこの街にはいません(その前に人間は寿命を迎えますからね)。それでしばらくは中立の立場で私たちと付き合ってくれていました。状況が変わったのはそれから1年ほど過ぎてからです。敵が現れました。海から来ると思っていたのに、東側から」


「そこから先は私がご説明しましょう」

そう言いながら、謁見(えっけん)の間にいた一人の男が進み出た。よくは覚えていないが、レイモン亡き後、兵士長を務めていたはずの男だ。

「キューマと申します。ノトスの街は敵の攻撃に(さら)されました。いえ、実際には街に来る前に食い止めたのです。ノトスの東側には崖があり、その下に大河が流れているのはご存知だと思います。たしか皆さんはパランクスを出てすぐに渡河したので、その大きさはご存知ないかもしれませんが、河口付近の川幅は広く、そこから垂直に崖がそそり立っているので、正直私たちはこちら側の備えはしておりませんでした。大河の先も広大な湿地帯が広がっていただけでしたから。しかしあるとき敵が姿を見せたのです。ワイバーンが軽々と大河と崖を越えて、ノトスの街の上空まで飛来しました」


オレがマスキロの方に目をやると、こっそりワイバーンがドラゴンの亜種(あしゅ)であることを教えてくれた。ドラゴンには翼と腕があるが、ワイバーンには腕はなく翼だけが生えているのだという。


キューマは話を続けた。

「ワイバーンは特に我々を攻撃することもなくノトスの街を後にしました。その直後です、私たちが『アルギュロス・ブラキオン』と呼んでいる人間が東から現れたのは。彼はモンスターに追われてやってきました。しかし運が良かった。私たちは大河のそばの崖の上にまで斥候を出していたので、すぐに彼とその仲間を見つけることができたのです」

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