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第171話 南エルフの10年

10年。それならば話がつながる。エルフたちはパランクスを放棄し、ノトスを目指した。ノトスに戻ってしばらく経ってから、東側の陸上から攻撃を受けた。そして今、ノトスは海上からの圧力にさらされているのだ。

「つまり時の歪みの塔か……」

オレたちはあの塔の中で相当に強くなったつもりでいた。しかしその間に塔の外では10年もの時が流れていた。何のことはない、10年分の修行を10年かけてやったに過ぎなかったのだ。


しかしゲネオスはまだ納得していなかった。

「ボクは帰還魔法を使いました。ご存じのとおり帰還魔法は最後に出た街に戻る魔法です。高地の街はまさに敵の進路でした。だから滅ぼされたとしてもおかしくはない。存在しない街には戻れません。ボクたちが出た最後の街は森の街でしたが、ここもおそらく同じ運命をたどったのでしょう」


オレはまず高地の街が消滅しているということに衝撃を受けた。そして森の街も。

たった10日前に出てきたと思っていたのに、実際には10年の月日が流れていたらしい。街がなくなる!?

この10年の間に何が起こったのか。オレは考えたくなかった。


ゲネオスは続けた。

「パランクスがもうなくなっているということも分かりました。これはボクたちが東へ旅立ったときから想像できたことです。しかしクレーネはどうなったのでしょう? 今帰還魔法を使ったらクレーネの街に戻るはずだったんです」

エレミアがゲネオスの問いに答えた。

「クレーネはもうありません。オアシスが枯れてしまったのです」

オレの髪の中でアクリスがかさりと音を立てた。


「パランクスの山城を出発なされた後、あなた方がどのような土地にお立ち寄りになられたのかは存じ上げません。おそらくこの後でお伺いできることと思います。ただパランクスの山城についてはもう原型をとどめておりません。そこにある石材は全てここノトスに運びましたから。ただ一人のエルフさえそこには住んでいないのです」

エレミアは続けた。

「クレーネも同様です。飲み水がなくなった街は、本当にあっけないくらい簡単に人がいなくなりました。ここの石材は運ぶことができませんでした。しかし間もなく街は砂に埋まってしまうでしょう」


オレはみんなの顔を見てみた。ゲネオスは無表情にこれまでの情報を飲み込もうとしていた。パマーダもまた呆然としていた。マスキロは特に変化は見られない。

オレだってゲネオスやパマーダのように表情をなくしていたと思う。10年……。決して時を無駄にしたわけではない。しかし貴重な時間を失ってしまったという感覚がどうしても頭を離れなかった。最初に思い浮かんだのは家族のことだ。父や母はまだ健在だろうか?

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