第165話 時の歪みの塔・再び塔外
帰り道は9階から1階へとボス戦を連続しながら降りてくることになったが、正直今の5人パーティではどうということもなかった。
オレたちは1日もかからずに塔の入り口まで戻り、そしてそのまま外に出た。
「よかった。外は昼間の時間帯みたいだ」
時間の感覚が狂っていたので、外の時間がよく分からなかったのだ。
昼間ならすぐに街に向かえば10日ぶりにベッドの上で眠ることができる
別に夜でもどうということはないのだが、深夜に宿屋のドアをたたくのは少々めんどくさい。
「ゲネオス、どうしたの?」
パマーダが声をかけた。オレも振り返ってゲネオスの方を見た。
ゲネオスは一本の木の前で腕組みをしていた。
「どうしたの?」
パマーダはもう一度訊いた。ゲネオスが顔をこちらに向けた。
「みんな、覚えてる? この塔に入ったとき、この雷で焼け焦げた場所の中で小さな木の芽が太陽を浴びていたのを」
ゲネオスが指を指したところには、緑の葉をつけた若木が枝を広げていた。
「いや覚えていないなあ。ただこの辺りが開けていて太陽の光が差し込んでいたのは覚えている。今は、、、確かにこの木のせいで薄暗いな」
しかしそれでもこの辺りは真に深い森の中に比べると木々の密度が低く、比較的明るく感じられた。
自然の光の中で見るとリエースの左目の下にうっすらと線が見えた。
「これか? もうだいぶ薄くなって分からないと思ったんだがなあ。まあ俺が駆け出しの冒険者だった頃につけられた傷さ」
オレの視線に気づいたリエースが、目の下を指でこすりながらそういった。
「ゲネオス、もう今のお前ならためらうこともないだろう。帰還魔法を使え。そうすればほんの少しだが森の街へ早く帰ることができる」
とマスキロが言った。
「俺は一人で行くよ」
とリエースが言った。
「俺は森の道をよく知っている。ここからならクズネツの街まで直接抜けることができるはずだ」
そしてオレたち一人ずつと握手を交わした。
「ザールに会ったらよろしく伝えてくれ」
「じゃあゲネオス」
ゲネオスはこくりと頷いた。
「帰還!」
ゲネオスはためらうことなく呪文を詠唱した。




