第161話 時の歪みの塔・塔外
時の歪みの塔は思ったよりも遠くなく、森の街を出てから3日目のお昼頃には塔の前まで行き着くことができた。
町長の話を聞いた後、オレたちはどうするか相談した。
しかし結局全員一致で塔に向かうことにした。
どこへ行くにしても今よりもっと強くならなければグレーター・デーモンに対抗できないし、ひょっとしたらただの伝説かもしれないが、塔内で鍛えれば相当のレベルアップが見込まれるというのも魅力だった。
それでとにかく駄目元でもいいから向かってみようということになったのだ。
塔は円筒形状で、幅は数十メートルもあるので、塔というよりお城のようにも感じた。
上を見上げると塔はどこまでも伸びている。
しかし真っ直ぐにそびえ立っているというよりも、少し傾いているようでもあり、いやむしろ塔の先が二つに分かれて螺旋を描いているようにも見える。
螺旋!?
そんなはずはない。このような建物が螺旋を描くなど不可能だ。
塔は天空どこまでも続いているように見えたが、そうこうしているうちに頭がクラクラしてきた。
視線を手前に戻すと、最初は大きく感じた塔も、幅10メートル程度に縮んでしまったように感じた。
見渡すとオレ以外のメンバーも頭をブンブンと振っている。
それでオレたちはとりあえず目の前に見えるものだけを信じることにして、塔の周囲を調べた。
塔の入り口はすぐに分かった。
丁度入り口の前が開けていて、日の光が差し込んでいたからだ。
よく見ると周囲に焼け焦げた木がいくつも横たわっていた。
「これは、、、雷か?」
どうも最近雷が落ちたらしく、その結果昼でも真っ暗な森のど真ん中に、明るい日差しが照らす一角が形成されていたのだ。
「こんなに高い塔があるのに、雷はこちらに落ちたんだね」
ゲネオスは一応倒れた木々を調べていたが、特に人為的なものではなく、単なる自然現象と考えて良さそうとのことだった。
オレにはライトニング魔法と通常の雷の違いはよく分からないが。
しかし雷でおかげで塔の入り口がハッキリと見て取れた。
オレたちの背丈の2倍くらいのところにアーチ状に組まれた石の並びがあり、そのアーチの下には2枚に開くこれまた石造りの扉があった。
「開くかな? もう何十年も来訪者はいなかったようだが」
オレは扉に手を掛け、グッと押してみた。
多少の抵抗はあったものの、扉は内側にスーッと開いていった。
塔の内部を陽光が照らした。
「行くか?」
いつものようにオレが先陣を切って、塔の内部に足を踏み入れた。




