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第160話 時の歪みの塔

オレたちが先を促すと、町長はゆっくりと話し始めた。


「この街からずっと北東の森に入っていくと古い塔があります。とてもとても古い塔なのですが、私たち街の人間は近づきません。というのも、その塔に近づくと何かこう妙な感覚に襲われるのです。


「その塔の名前は『時の(ゆが)みの塔』と言います。『歪み』というのは良い表現だと思います。本当にその塔を見ていると高いのか低いのか真っ直ぐなのかそうでないのかすら分からなくなるのです。とても大きく感じることもありますが、それならこの街からも見えるはず。けど街の見張り台に登っても、塔の辺りはいつもはっきり見えないのです。


「しかし、かつてその塔を目指した冒険者がいました。いや、何人もいたはずです。はるか昔のことではありますが。


「私が会ったことがあるのは一人だけです。ええ、一人だけ見たことがあるのです。覚えています。その冒険者と塔の下まで行きましたから。その冒険者はもの凄く年上に感じましたが、それは私が子どもだったからで、実際には30歳前後だったのではないかと思います。左目の下に小さな刀傷がありました。塔までの道案内を頼まれたので、私は小遣い稼ぎと思って引き受けました」


町長は50歳前後だろうか。子どもの頃と言っても、森の中を道案内するくらいだから、そこまで小さな子どもではなかったはず。おそらく30年から40年くらい前の話ではないかと思われた。


「報酬を受け取るとき、その冒険者はニヤリと笑いながら『お前もついてくるか?』と私に尋ねました。私は塔を見上げました。その塔は天高くどこまでも続いているように見えました。私は何も言わずただ首を振ってその場を立ち去りました。けれどあとから考えると、それが時の歪みの塔に向かった最後の冒険者だったらしく、そしてその人も帰っては来ませんでした」


「どうしてみんなその塔を目指したの?」

パマーダが尋ねた。

「それはその塔に入るととてつもなくレベルアップができるという伝説があるからです。それもかなり短期間で」

町長が答えた。

「かつてこの世界を治めた王も時の歪みの塔で力を得た後、国土を統一したと言います。その王は人間でしたが、エルフの知己も多かったと伝えられています」


「塔の中がどうなっている分かりますか?」

ゲネオスが訊いた。

「分かりませんが、相当数のモンスターがいることは確かなようです。階が上がるほど強力なモンスターが現れ、まだ最上階を攻略したものはいないとか。しかしそれぞれの階で得られる経験値は相当のもので、皆その噂を信じて塔に挑戦していったそうです」

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