第157話 目覚め
そこから先のことはオレは何も覚えてない。
気付いたときにはオレはベッドの中にいた。
まだ状況がよくつかめない。
顔は動かさず目だけを動かした。木を打ちつけられた天井が見える。天井はそんなに高くない。
オレは布団の中で手を握りしめた。手には感触がある。
腕を動かそうと試みた。動く。
手が目の前にきた。指は全部揃っている。
オレは意を決して手のひらで顔に触れた。
顔の表面にはあるべきものがあり、傷や欠けた部分はなかった。
両手両足が動くことを確認してから首を動かした。
痛みも変な引っかかりもない。
この部屋は暖かく窓から光が差し込んでいる。
宿屋か民家の寝室のように思えた。
「サルダド、起きたの?」
パマーダの声がした。
「ああ…?」
「よかった。前衛の二人は特に損傷が酷くて、特にあなたはほとんど炭のようになっていたし……」
よく見るとベッドがもう一つあり、そこにはゲネオスが横たわっていた。
一瞬心臓が締め付けられるようにギュッとしたが、ゲネオスを覆った毛布が胸の辺りで上下するのが見えたので胸をなで下ろした。
「ゲネオスは大丈夫よ。まだ眠っているけど」
パマーダはずっとこの部屋にいたらしい。
だいぶ頭がハッキリしてきたので、オレはファイヤー・ボールが飛んできて以降の話をぽつりぽつり話してもらった。
「ゲネオスの魔法で森の街まで戻ってこられたの」
気付いたときには四人は森の街の入り口のところに横たわっていたらしい。
すぐに街人が気づき、全員町長の家まで担ぎ込まれた。
一番ダメージが少なかったパマーダはまず自分自身を癒やすことに集中し、なんとか命の危険がなくなるまで回復してからは、残る三人に順々に回復魔法をかけていった。
二番目にダメージが少なかったマスキロが目覚めてからは、彼のストックのマナ・ストーンの援助を得て回復魔法をかける頻度が上がった。
「最初は全然マナが回復しなくてもどかしかったわ。そんなときサルダドの前に立つと不思議とマナがみなぎってくることがあった。そう、それは誰かがマナをトランスファーしてきたときの感覚に似ていたわね。まるでサルダドへの回復魔法を催促するような」
パマーダは不思議に思ったものの、それで得たマナをすぐに回復魔法に転換した。
しかしオレに対してはより上位の回復魔法が要求されたため、回復のスピードはゆっくりになった。
結局オレは三日三晩意識を失い続けていたらしい。




