第155話 イマミアンドへ
酒場の前はオレたちが来た道に対して垂直な道があり、T字路となって建物の左右に分かれていた。左に進むと町長の家がある。
町長の家の中には町長のほか、娘や使用人が数名いた。
オレたちが冒険者であることを告げると、町長は快く泊まる部屋を用意してくれた。
オレたちはいくらかの宿賃を前払いで渡した。
「ここには専門の料理人はおりませんので、皆さんにお食事をお出しすることはできません」
それはあらかじめ聞いていたので、朝飯用の軽食は酒場で用意してもらっていた。
夜が更けるにつれずいぶんと肌寒くなってきた。暖炉にはいつの間にか火が点されていた。
「朝晩になりますと、もうこの辺りは少し冷えると思います」
町長は説明した。
「そうか冬が近いのか……」
オレはこれまでの旅路を思い返していた。
南の国へ飛ばされ、その後砂漠や高地を旅してきたので、オレの季節の感覚は半年くらいですっかり狂っていた。
しかしこの街のある辺りは、俺が知っている季節の感覚と一致している。
だいぶオレの生まれ故郷に近付いてきたのだろうか?
暖炉を囲む人の輪には町長の娘も加わった。
町長の娘はオレたちの話を喜んで聞いてくれたので、大事な部分は伏せ、そうではないところは大きく膨らませながら、これまでの旅を面白おかしく語って聞かせた。
娘と入れ替わるように町長も暖炉の炎を求めてきたので、オレたちはもう少し突っ込んだ話を振ってみた。
「この街はどこかの国に所属しているんですか?」
口火を切ってゲネオスが尋ねた。町長は黙って首を振った。
「いいえ、イマミアンドはこの街のことを知らないと思いますし、あえて探そうともしていないと思います。この街はほんの小さな隠れ里に過ぎません」
(イマミアンド!)
オレたちは黙って顔を見合わせた。
「元々はこの街があったところにエルフが住んでいたとも伝えられています。しかしそれは数百年の前のこと。私たちがこの場所を見つけて住み始めた頃には周囲の森とほとんど変わらないほどになっていました。ただ信じられないことにいくつかの建物は朽ちることなく建ち続けていたのです。この家もそのうちの一つです」
酒場のあった建物も元はと言えばエルフの建造物であったということを町長は教えてくれた。
あまり話したがらなかったが、2世代ほど前にイマミアンドを逃れてきた人間が入植してできたのがこの街らしい。
以来目立たぬようひっそりと暮らしてきたのだが、イマミアンド自身もあまりこの街に関心を持っていないようだと町長は語った。
「すまないがオレたちはイマミアンドがどこにあるのか知りたいんだ?」
オレは単刀直入に訊いてみた。
町長は特に表情を変えることなく淡々と答えてくれた。
「するとあなた方がイマミアンドから来たのではないのですね。多分ここへ来る道に入る前、古い街道が南北に走っていたと思います。その道を北へ真っ直ぐ進めば数日で森を抜けます。その先の街道に出ればイマミアンドへの道はすぐに教えてもらえるでしょう。
イマミアンドへ! オレたちは遂に目的地への行き方を見つけたんだ。




