第152話 斥候
海峡を越えた後、オレたちはなだらかな斜面を北へ北へと下っていった。
海峡の近くこそ開けていたが、すぐに周囲は木々に囲まれ、やがてオレたちは深い森の中をひたすら歩いて行くことになった。
海峡の南側の森と異なり、こちらは外が晴れているかどうかすら分からないくらい枝枝がしっかりと絡み合っていた。
しかし、かろうじて道と分かる程度に地面が均されていて、時折大きく出っ張った木の根っこに躓きそうになるものの、大きな障害はなく歩みを進めることができた。
「不思議な道だな」とオレは言った。
森の中には所々開けたところがあり、そこで感じる光の強さでかろうじて時間が分かるという感じだった。
そうした歩みが二三日も続いただろうか。先頭を歩いていたゲネオスが急に歩みを止めた。
オレが声を掛けようとすると「シッ」と指を口の前に立て、オレが声を出そうとするのを制した。
パマーダ、マスキロも追いついてひとかたまりになったので、ゲネオスは声を潜めて説明しだした。
「なんだかこの先の道から音が聞こえる。一つではなく複数だ。かなりのスピードで近付いている」
考えている暇はあまりない。
「隠れるか?」とオレが言った。何が近付いてくるのか観察し、害がないと分かってから出ていっても構わないだろう。
オレたちはすぐ近くの茂みに飛び込み、できるだけ姿勢を低くして、その近付いてくる何かを待った。
すぐにオレの耳にも何かが近付いてくる音が聞こえ始めた。オレは馬の足音だと思った。
実際そう思った直後に5頭ほどの馬と、それにまたがった兵士たちが、オレたちの目の前を駆け抜けていった。オレたちには全く気付かないようだった。
ハッキリとは分からなかったが、それらは皆人間の兵士であるようだった。
視界から馬の姿が消え、さらに別の兵士が来ないことを確認してから、オレたちは今見た状況を話し合った。
「今のは?」
「おそらくは、塔のデーモンが放った伝令か……」
とマスキロが答えた。
海峡でデーモンを倒してから、大体1週間が過ぎている。ハーピィはすぐに敵の本拠地に着いただろうから、その後すぐに斥候を派遣したと考えると、大体の位置が想像できた。
「声を掛けなくて正解だったね」とゲネオスが言った。
オレたちは特に言葉を交わすこともなく、やがて斥候が来た方向に向かって歩き始めた。兵士たちとすれ違ったことで、この先にオレたちの目的地があることははっきりしている。




