第148話 捨て身の攻撃
ゲネオスは明らかにびっくりした顔をしていた。
おそらくはパマーダやマスキロも呆気に取られていただろう。
そして目の前のデーモンさえも驚いたのか、一瞬ミョルニルの行き先を追うように動きが止まった。
しかし勿論オレはミョルニルの方など目もくれなかった。
ミョルニルを手放した瞬間、真っ直ぐデーモンに飛びかかり、武器をなくして空っぽになった両腕をデーモンの胴体に巻き付けたのだ。
デーモンはそれを振りほどこうと抵抗した。
オレは必死で食らいつき、10秒程度粘った後、崖の方に向かって叫んだ。
「ミョルニル! オレたちを引っ張るんだ!!!」
オレが指令を発した瞬間、オレとデーモンは二人一緒に強力な力に引っ張られ、塔の屋上から海峡の方へと宙を移動し、そして崖の下へ、とてつもないスピードで落下し始めた。
両岸にそびえ立つ崖の間には十分な広さがあったが、すぐに太陽の光が陰り、下へ行くほど薄暗くなっていった。
切り立った崖は本当に垂直に真下へと続いている。オレは先行するミョルニルと、その先のおそらくは海面だけを見つめていた。
「ミョルニル! もっとだ! もっと速く!」
オレの投じたミョルニルは海抜ゼロメートルが近付くにつれ、対岸の崖の辺りを目指していた。
デーモンはなんとかしてオレを振りほどこうともがいていたが、支えのない空中では上手く力を出せないようだった。そしてオレはデーモンを離すつもりなど毛頭なかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
一瞬だけミョルニルのそばを通過した感覚があった。そして次の瞬間崖の真下の岩礁に、デーモンごと突入した。
デーモンの頭部が崩れる気持ちの悪い音がした。しかしオレも気を失ってしまった。




