第146話 臆病な鳥
マスキロの火の球を受けて、ハーピィ(モンスター名はマスキロの発言で判明)たちはギャアギャア騒ぎ出した。
何体かは塔の屋上に侵入して攻撃を仕掛けてきたが、マスキロの魔法で撃ち落とされる個体が増えるにつれ、空中に飛び上がり、塔から一定の距離を取った。
そこでしばらくホバリングしていたが、分が悪いと判断したのか、やがてどこかへ飛んでいってしまった。
正直オレたちのパーティーには飛び道具が少なく、マスキロの魔法を除けば、オレのミョルニルくらいしか遠隔に攻撃できる武器がない。
そのためハーピィたちが戦線を離脱してくれたのは非常に好都合だった。
オレはデーモンとの戦いに忙しく、サブのモンスターに対処する余裕はなかったからだ。
目の前のデーモンはハーピィの動きに全く関心がないようだった。
「こいつ、鳥どもがいなくなっても、全然動じないな!」
オレは肩を並べてデーモンに挑んでいたゲネオスに大声で呼びかけた。
「こいつはあんな奴らの助けなんか必要ないでしょ!」
全くそのとおりだった。今やオレたちよりも遥かに大きい体躯となったデーモンは、その巨体にもかかわらず動きは小動物のように俊敏だった。デーモンは武器を持たず、素手で襲いかかってくるのに、オレとゲネオスは楯で攻撃を受ける度に後方に弾き飛ばされそうになった。
ゲネオスはロング・ソードで細かい傷をデーモンに与えている。しかし頭部や胴体のような致命的な部位への攻撃はいまだ成功していなかった。
オレは早々に剣を諦め、ミョルニルとカイト・シールドでデーモンに対処した。しかしこちらもデーモンの生死に影響を与えるような打撃を与えることができない。
そのとき2回目の攻撃魔法がオレたちを襲った。マスキロのカウンター・マジックのおかげで、1回目の不意打ちほどはダメージを受けなかったが、1回目と同じく身体中のあちこちに傷口が開いた。
「風の魔法だ。防御魔法は効くが100%打ち消すことはできない」
マスキロが大声でオレたちに情報を伝達した。
「つまり耐えてくれ!」
オレたちはダメージを受ける度に防御に徹し、パマーダの回復魔法を待ってからまた攻撃するということを繰り返した。時間はかかるがこれならば数に勝るオレたちが勝てるはずだ。
「サルダド、あれを見て」
攻撃の合間にゲネオスがデーモンの方向を指し示した。それはゲネオスの攻撃がクリーンヒットし、かなりのダメージを与えた直後だった。
デーモンが胸に刻まれた深い切り傷に手を当てている。手のひらがボーッと鈍い緑色に光り、僅か数秒後には傷口が消えていた。
「あれは、、、回復魔法か!?」
「うん、どうも時間をかけたら勝てるというわけではなさそうだね」
回復直後のデーモンの攻撃をカイト・シールドでまともに受けてしまったので、オレはゲネオスに相槌を打つこともできず、後方に吹き飛ばされ尻餅をついた。




