第142話 挨拶
対岸の塔に向かって真っ直ぐ進んだミョルニルは、やがて塔の上に立っていた男に接触し、男をくっつけたままこちらに戻ってきた。
男の後ろには長い長いロープが続いている。ムイースは驚きのあまり口がポカンと開いたままになっていた。
男は特に悲鳴を上げるでも大声を出すでもなく、塔と塔の間の海峡を越え、空中をこちらに向かって飛んできた。
スナップはほとんど効かせずに投げたつもりだが、それでも男は何回転かしながら、やがてオレたちのいる塔の屋上に綺麗に降り立った。
降り立つとすぐに男は左右を見回し、まずムイースのところへ行って挨拶を交わした。そしてムイースがオレたちを指し示すと、こちらの方へ近付いてきた。
「初めまして、私の名前はオルニスと言います。貴方がゲネオスさん? 貴方がサルダドさんですか?」
オルニスと名乗った男は、オレたち4人に順に握手をしていった。
オルニスの上背はオレよりも少し高いくらいだったが、その手はオレの手よりも一回りも二回りも大きく、少し歪な感じがした。そして握った相手の手のひらは異常なほど冷たかった。
「皆さんは冒険者の方ですね。見れば分かります。それもかなり高レベルの」
オルニスはゲネオスの腰に差した短剣に目を留めた。
「ほほぅ、それは? とても高価なものですね」
「そう、、、かな?」
「刀身を見せてもらうことは可能でしょうか?」
「いいけど……」
ゲネオスはスティングを鞘から引き抜いた。銀色の刀身が陽光の下で美しく輝いていた。
オルニスはひとしきり眺めると、手をあげて「結構です」のジェスチャーをした。
「ありがとうございます。エルフの手による業物ではないでしょうか。とても美しい」
ゲネオスはうなずくと、スティングを元に戻そうとした。
「おかしいな」
ゲネオスが言った。
「どうしましたか?」
「いえ、鞘に戻そうとしたら何か引っかかるような抵抗があって。けど大丈夫です」
オルニスはオレのミョルニルにも関心を示した。
「それが先ほど私にくっついて、空中を運んだものですね?」
「ああそうだ、詳しくは分からないが魔法の品であるようだ」
オレはミョルニルの名を伏せてそう答えた。
「見事な品ですな。さしずめ雷鳴のウォーハンマーといったところでしょうか」




