第140話 海峡の男
塔の中は確かにモンスターが潜んでいたが、オレたちの敵ではなかったので詳細は省略する。
ムイースはオレたちがモンスターをプリンみたいに切り払うのを見て目を丸くしていた。
「皆さんは一体どこからいらしたんですか?」
「いや何、ちょっと色々と寄り道しながら来たんでね。それで多少は強くなったかな」
今さら北の国から来たというのも気が引けたので、そこは言葉を濁しておいた。
それにこの先に北の国があったとしても、初めの城があったところからどれくらい離れているのか全く分からない。
「ムイース、確か昨日『南北に分断』と言っていたが、すると大昔は南北が繋がっていたということか?」
屋上に上がる直前、オレはムイースに尋ねてみた。
「はい、この塔は実は塔ではなかったのでは?というのが私の考えです。つまり大昔にここに橋が架かっていたのではないかと思うのです」
「橋!?」
「はい、実はこう見えて私は大工の端くれです。どちらかというと設計が専門ですが。ここへ来る途中の2階で外に向かって壁がぽっかりと開いているのをご覧になりましたよね?」
そう言えばそうだった。塔の壁が不自然に大きく崩れ、そこから対岸の塔がハッキリと見えたのを覚えている。
「あそこに橋桁がかかっていたのではないかと思うのです。そしてこの二つの塔が吊り橋の支柱となり、橋桁を支えていたのではないかというのが私の推測です」
「おぉ」
確かに塔の1層目から2層目への上り階段は広かったが、2層目から3層目はかなり分かりづらいところにあった。人々の目的が2層目にあったのだとしたらそれも納得だ。
さらに吊り橋なら頑強な支柱が必要なので、このようにしっかりした塔が建てられたのにも合点がいく。
最上層に到着した。塔の上は真っ青な空が広がり、心地よい風が吹き抜けていった。
胸壁が四方を取り囲んでいたが、城や砦のような銃眼はなく、やはりこの塔は戦争目的に作られたものではなさそうだ。
対岸の塔に目をやると、確かにそこに人影があった。
その人影は早速手旗を振り、何らかのメッセージを伝えてきた。
「何と言っているんですか?」
ゲネオスが尋ねた。
「『久し振り』と言っています。モンスターが塔内に現れてから、しばらくここまで登ることができませんでしたから」
その後もしばらくムイースは手旗を使ったコミュニケーションを続けていたが、一段落したのか手旗を下ろしてこちらに戻ってきた。
「今日はもう終わりです」
ムイースは今日話した内容をかいつまんで教えてくれた。そして少し探るような目つきで自分の考えを披露した。
「実は私たちはこの吊り橋を復活させたいと考えているんです」




