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第132話 ミラヤとの別れ

北の国のエルフの話をもっと聞きたかったが、エレミアは「私も詳しくは知らないのです」と、オレたちの好奇心をかわした。


ゲネオスは自分に合ったマナ・ストーンがないかエレミアに尋ねていたが、すぐにマスキロにたしなめられた。

「ゲネオス、お前は10年間は魔法は禁止だ。その間にしっかりと精神力を鍛え、強力な呪文に耐えられるようにしなければならん」

「分かったよ」

それでもゲネオスは手頃なサイズのマナ・ストーンをエレミアから受け取っていた。


出発の日がやってきた。この日はともに戦ったエルフたちとの別れであるとともに、もう一つの特別な別れを受け入れなければならない日だった。

「大河の東側は砂漠ではありません。森と水と山の世界です。つまり駱駝(らくだ)は生きてはゆけぬ世界です」

エレミアのアドバイスを受けて、オレたちはミラヤをエルフたちに預けていくことにしていた。

「私たちはノトスに戻ります。それはミラヤにとっても故郷に帰ることになります。彼女にとって決して不幸なことではないはずです」

オレたちは代わる代わるエレミアに触れ、首や顔にキスをした。その頃にはミラヤも決してオレを嫌ってはおらず、オレに頭をこすりつけてきた。


ここで出発の日の前夜のことに触れておきたい。

その夜もアンモスはオレたちの部屋に来て、オレたちの冒険のことを聞いていた。

戦いの前夜までに全てを話すことができなかったので、プエルトに渡って以降の話はこのときにしていたのだ。

プエルトの旨い料理の話をしたとき、アンモスは特に目を輝かせていた。


アンモスが部屋を去り、そろそろ明日に備えて眠ろうとしたとき、エレミアからの使いがやってきた。

「サルダド殿のみお越しくださいとの伝言でございます」

使いの者はそう言った。

怪訝(けげん)に思ったが言われたとおりにすることにした。

廊下を歩いていくと、エレミアは自室から出ており、オレを地下へと続く階段へと(いざな)った。

階段は暗く、下へ進むと足元すら見えなくなった。

エルフは夜目が効くのか何不自由なく階段を降りていったが、オレは壁を触りながら進むことしかできず、最後には勘に頼って足を踏み下ろした。

やがて扉が開く音がした。階段の終わりに扉があって、エレミアはその中に入っていったようだ。

オレは足元が平らになるのを確認してから、エレミアに続いた。


「ここはパランクルスの山城の、最も基礎の部分です。今いる私たちの周りは、先代の王が初めて組んだ石組みに囲まれています」

オレは手を伸ばし、壁を触った。確かに石の感触がした。

手を滑らせていくと、石と石の間に境目があった。当然エルフの手によるものだから、わずかの隙間もなく、ただ境目の線が指に当たるだけだった。


「サルダド殿、ここでちょっとお願いしたいのです。石に命じてほしいのです。『動け』と」

「え?」

どういうことだろうか。

「石に命じる? 一体どうやって?」

「心に思い浮かべるだけで結構です。

オレはちょっと考えたあと、石壁に手を付け、心の中で『動け』と言った。

しばらくしてエレミアが口を開いた。

「これでいいのです。今は何のことか分からないかもしれません。けれど貴方が今されたことは、やがて多くのエルフを救うことになるでしょう」


エレミアは暗闇の中でオレと位置を入れ替え、元来た道を戻り始めた。

オレは再び手探りで階段を上り、地上階に戻るとエレミアと別れた。

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