第129話 デルタのワーム
「一つ質問してもよいでしょうか?」
長老格のエルフの説明が終わると、ゲネオスが口を開いた。
「どうぞ」
「デルタ地帯の探索は中程まで行ったということですが、そこで中断した理由はなんですか?」
長老格のエルフは一瞬回答を躊躇したが、すぐにゲネオスの問いに答えた。
「ワームが見つかったからです。その戦いで3名のエルフが命を落としました」
「ワーム?」
「この場合は水竜のことだな。蛇型のドラゴンといったところか」
とマスキロが代わりに答えた。
長老格のエルフはマスキロの言葉に頷いた後、話を続けた。
「デルタ地帯の水路は無数にあり、時と共にその位置や広さ・深さを変えます。ワームは神出鬼没です。発見時に1名が命を落とし、その後警戒していたにも関わらず、立て続けに2名殺されました」
それで探索を中断したのだ。これまでに知ったエルフの価値観からすると、エルフは仲間の死を大変に嫌がる。リスクを冒してまでワームを討伐しようとはしないだろう。
長老格のエルフが部屋を退室した。
オレたちは再びエレミアと向き合った。
「大河の渡河のことでしたら、このパランクスの地においては一つ方法がございます」
「どういうことですか?」
「パランクスは大河の源流に近いのです。ですからまだ川幅は狭く、深さもそれほどではありません。この辺りで河を渡ってしまえば海に近づく頃には崖と最初の大河を超えていることになります」
「おぉ」
「しかしその先の湿地帯を回避することはできません。地形的に必ずデルタ地帯に入ってしまいます。デルタ地帯をどう抜けるかについては、先ほどの話のとおり、私たちには知見はございません。そして、そう、ワームの対処方法についてもです」
「マスキロ、ワームというのは強いのか?」
オレはマスキロに尋ねた。
「ワームはドラゴンの眷属だ。ドラゴンはデーモンを除けばモンスターの中では最も強いものの一つだ。ワームはドラゴンの中では下位に分類されるモンスターだが、それでもワシらが束になってかかって勝てるかどうか。言っておくがエルフは強いのだぞ。それが3名も殺されているのだ」
「そうか、じゃあどうするかだな」
オレたちは顔を突き合わせた。プエルトに戻るか、ノトスの奪回に手を貸すか、東進し北の大陸を目指すか。
「初めの城に戻るのは違う気がする。なんとなくだけどそこから先どこにも繫がっていないような気がするんだ」
まずゲネオスが口を開いた。続いてパマーダが言った。
「確かサルダドはノトス奪回の加勢については消極的だったわね。それは私も同じ。私たちは待つよりもっと直接的に敵に迫れると思う。つまり、、、イマミアンドを目指すべきということよ」




