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第126話 マジック・アイテム分配

これまでオレたちは何気なくアーティファクトという言葉を使っていたが、アーティファクトにはそのような意味があったのか。

オレは腰に下げていたミョルニルを持ち上げ、あらためてそのディテールを確かめた。

見た目はただのウォーハンマーだ。確かに(つち)の頭の部分には素朴な紋様が彫り込まれ、ところどころオレには読めない文字のようなものが刻まれている。

しかしゲネオスが受け取ったロング・ソードように、趣向を()らした細工が施されているわけではなかった。

ただ形としては全体的に歪みがなく、柄の部分を持つと自然と手に馴染む感じがした。

見た目は平凡ではあっても、その特殊効果はこれまで何度もオレたちを助けてきた。

その点に関してはアーティファクトと呼んで間違いない。


「サルダド殿はこれをお持ちください」

今度はゲネオスのものよりかなり大きい宝箱が開けられた。中を(あらた)めると、大型の盾が収められていた。

「カイト・シールド プラス1です」

エレミアが言った。

「アンモスを助けて頂いた話を聞きました。そこから宝物庫に眠るこの大楯のことを思い出したのです。魔法の品で通常のカイト・シールドより軽くはなっているのですが、長く我らの中では使いこなせる者がおりませんでした。かつてのエルフの勇者『大男の(ジャイアント・)アルクトス』が愛用したと伝え聞きます」

オレは宝箱に収められた盾を手に取った。地面に置くと肩の辺りまで届くような大きさだが、不思議と重さを感じない。

「とても軽いな」

思わずつぶやいたオレの言葉にエレミアは微笑んだ。

「貴方ならそう感じるでしょう」


「パマーダ殿、貴女にはこれを」

今度はオレとゲネオスのものの丁度中間くらいの大きさの宝箱が開けられた。

この品はエレミア自ら取り出した。

「チェイン・メイル プラス1です」

エレミアが服のワンピースのような形状をした防具を広げた。一見すると布のようだが、よく見ると銀色の細かい鎖が連なったチェイン・メイルであることが分かる。

「戦士の方々が着るようなものではありませんが、魔法の効果で軽く作られ、そして見た目より高い防御力を誇っております。これなら呪文の詠唱を邪魔することもないでしょう」

パマーダはエレミアから手渡されたチェイン・メイルを手に取った。

「ありがとうございます。次の冒険に出るとき身に(まと)いましょう」

エレミアが付け加えた。

「エルフはかつてミスリル銀を用いたチェイン・メイルも作っていたのです。しかしそれは現在、所在不明となっています。明らかにプラス3の品ですので、高い防御力以外に特殊な効果もあったに違いありません。しかし特殊効果の内容すらも、今では伝わっておりません」


最後にエレミアはマスキロの方に振り返った。両手でマスキロに贈る品を抱えている。これは宝箱には収められてはおらず、白い布に巻かれているのみである。

「マスキロ殿にはこれを」

マスキロが白い布を解くと、巨大なマナ・ストーンが現れた。ゲネオスが壊してしまったマナ・ストーンと同じくらいか、ややこちらの方が大きいようにも思える。

「この城にバリアーを張るために使っていたものです。しかし呪文使いとしての今の私たちには大きすぎます。貴方様がお持ちになる方が良いでしょう」

マスキロはマナ・ストーンを手に取って確認した。

「これは大変有り難い品だ。正直ワシはマジック・アイテムには事欠かないのでな。マナ・ストーンの方が重宝だ。しかし良いのか? これからのエルフの戦いでもマナ・ストーンは必要となるだろう」

エレミアは答えた。

「私たちはノトスを回復せねばなりません。もちろん一度はクレーネに戻りますが、その後はノトスを目指します。ノトスでの戦いではバリアーは効果を発揮しないでしょう。()の街は開かれた土地に築かれておりますから」

「そうか。では遠慮なく受け取るとしよう」

そう言うとマスキロはサッとマナ・ストーンを消してしまった。おそらくローブの内側にある隠しにしまい込んだものと思われる。あんなにも大きいものが何故ローブの内側に収まるのか、いまだに分からない。

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