第119話 遠雷
レイモンを含む部隊は、第二防壁まで防衛ラインを下げて戦っていた。
戦いの要であったレイモンが討ち死にしたことは、この防衛戦の成否に大きな影響を与える。
オレたちは東側の櫓も放棄し、第二防壁の守りに加勢する方向に戦術を転換せざるを得なかった。
その後も戦いは続いた。
東側の櫓の中にはもう4人しか残っていなかった。
オレとゲネオスとパマーダにアンモスの4人。ほかの仲間は滑車を使って第二防壁の櫓、もしくは館に隣接する第三防壁まで撤退していた。
しかしこの4人はもう逃げられない。
というのも滑車の役割に気付いたダーク・メイジが、櫓と櫓の間の金属線を魔法で撃ち落としてしまったからだ。
パマーダは背中からトライデントを降ろした。
「パマーダ、どうしたんだ?」
「もう治癒は打ち止めよ」
パマーダは手を差し出して、オレたちにマナ・ストーンを見せた。
本来赤紫色をしているはずのマナ・ストーンは、すっかり輝きを失って灰色の石ころになっていた。
「治療ができなくなった癒し手もまだやれることはあるわ」
アンモスは腕を負傷していたが、剣を握った状態で包帯をグルグル巻きにしてもらい、がっちりと剣を固定していた。これはつまりパマーダの治癒の魔法が間に合わなかったことを意味する。
「パマーダ殿は後ろへ。まだまだ私も戦えます」
アンモスはパマーダを制した。
ゲネオスがフラフラと固く閉ざした櫓の扉の方へ向かっていった。
「あれ? ゲネオス。どうした?」
ゲネオスは返事をしない。
オレは慌ててゲネオスを追った。しかしゲネオスは相変わらず無反応だ。
一体どうしたのかと、前に回ってゲネオスの全身を観察した。そしてなんだか妙なことに気付いた。
「あれ? お前、瞳が大きいな。……そうだ、エレミア妃のように。おい! どこへ行くんだ!」
ゲネオスは黙って扉の閂を外すと、そのまま外に出ていこうとした。ゲネオスは剣を鞘に収めたままだ。
オレはゲネオスの腕を掴んだが、ゲネオスはあっさり振りほどきそのまま外に出ていった。オレは残る二人に対して声を上げた。
「パマーダ、アンモス、お前たちはここへ残ってくれ!」
「サルダドは!?」
「オレはゲネオスを援護する。何かおかしいんだ」
オレたちが櫓の外に出ると、数体のモンスターがオレたちに気づき、早速攻撃を仕掛けてきた。
オレはゲネオスの前に回って、その攻撃を打ち払った。
ビカッ
かなり近くで稲光がした。
ゴロゴロゴロ
わずかに遅れて雷が鳴った。
ゲネオスを振り返ると、何やら呪文の詠唱を始めているようだった。
薄い光がゲネオスの身体を包み、ぼんやりと輝いていた。
そのとき、城塞の内側の方から声がして、その後すぐに何かが飛んできた。
それは巨大なマナ・ストーンだった。
人間の頭ほどの大きさがあり、ゲネオスの側で浮かんでいる。
表面は赤紫色に輝き、何百ものカットが加えられた表面は、それぞれが波のない湖面のように滑らかだった。
マナ・ストーンからは何本もの光の線が放射され、それがゲネオスにつながっていた。
ゲネオスを包む光が強くなり、ゲネオス自身も大きく膨らんだように見えた。
次の瞬間、ゲネオスが叫んだ。
「ライトニング・ストライク!!!!!」




