第115話 サソリ梯子
打ち上げられてきたモンスターはオークに限らなかった。巨大イノシシや巨大オオカミ、先ほどの体格のいいオークの戦士などが次々に姿を現した。
オレはそのまま第一防壁の西側に留まり、城塞に侵入してくるモンスターを排除することにした。
ゲネオスもこちらに合流してきた。
初めのうちは十分に対処できた。
城塞の4基の櫓に詰めている弓兵や魔法使いが、モンスターが打ち上がってきたタイミングを狙って一斉射撃を加えていたし、オレも一対一であればこのレベルのモンスターに引けを取らないつもりだ。
エルフの戦士はいざ戦うとなるとかなり強い。
前衛に立つエルフは全て魔法戦士で、攻撃魔法、防御魔法織り交ぜながら戦っている。
しかし複数のモンスターが城壁の上に揃い始めると、状況が変わってきた。
オークが盾を構えて打ち上げられてくるモンスターを守り、猛獣タイプのモンスターは低い位置から攻撃を加えてきて、オレたちの防御力を削り取っていった。
オレはジャイアント・ボアを一頭仕留めた。
「さあ次だ!」と、ターゲット・モンスターを求めて振り返ると、とんでもない風景が目に飛び込んできた。
「何だこれは!」
数名のエルフの戦士たちが歩廊の上でスヤスヤと眠っていたのだ。
その先を見ると、黒いローブを身に纏った見覚えのある奴が呪文を唱えようとしていた。
「くそ、ダーク・メイジも打ち上げやがったか」
ダーク・メイジは城壁の上に立つとすぐにオークの盾の影に入り、素早く周囲を見渡して状況を確認していた。
そして各櫓の弓兵や魔法使いを狙って眠りの魔法をかけているようだ。
「おい、眠っている奴がいたら蹴っ飛ばしてでも目を覚まさせろ! 弓兵部隊と魔法使いはダーク・メイジを狙ってくれ!」
眠っていた戦士たちは何とか間に合ってモンスターの犠牲にならずに済んだ。
しかし、既に第一防壁の西側は乱戦状態になっており、こちらも飛び道具を使った攻撃が難しくなりつつあった。
やむを得ずオレは、戦士らしく目の前のモンスターを倒すことに専念した。
「くそ、攻撃が当たらない!」
しばらくモンスターとガチンコの攻防が続いたのだが、なんだかいつもと感覚が異なった。
普通なら当たっていると思われる攻撃がかわされる。そして攻撃が当たらないだけでなく、当たっても十分なダメージが与えられないような気がした。ダーク・メイジによって、何らかの支援魔法がかけられているのは明らかだ。
それでもオレは一匹、また一匹とモンスターを倒していった。
次の獲物を探しながら、オレは何気なく本来の持ち場であった東側の櫓に目をやった。
第一防壁は内側に凹んだアーチ型になっている。そのため防壁の西側から東側を見ると、城壁の外側の面を見ることができた。
「な……なんだあれは……」
オレは目を疑った。そこにはモンスターが梯子のようなものを伝って登ってこようとしていたからだ。しかしこんなにも長い梯子があるはずはない。
目を凝らして見ると、その梯子はジャイアント・スコーピオンでできていた。一匹の大蠍の上に別の大蠍が乗っかり、下の大蠍がその頭部と尾を使って上の大蠍を支える。それを何百回も繰り返して、城壁の縁まで届きそうになっていたのだ。




