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思いを馳せる少年


 その、とある場所とは――

 ――エルフの移住地である、森へいくことである。


 ……宴の最終日、ハルバトーレとの会話で。


「ヘルト君。わたしの文献では、これ以上のことを調べるのは難しそうだ」

「そうですか。それでもいろいろ分かったし、助かりました」

「……それでね。これからなのだが――」


 ここで片眼鏡をキラリと煌めかせ、会話を続ける。


「会ったことのある者に聞いてみる、というのはどうだろうか?」

「へ? そんな人いないでしょ? だって千年前の人なのに意味わからないんすけど……その眼鏡壊れてないっすか?」


 眼鏡ではなく、ヘルトが壊れた。

 そんなヘルトを余所に、セイラが言う。


「なるほど……そういうこと、で御座いますか」

「セイラ君。やはり君は、すぐ気づけたようだね」


 セイラはハルバトーレの言葉の意図が、説明せずして知れたようだ。

 それでも、ヘルト含む周りに集まる他の者には理解に苦しむ言葉だった。


 ハルバトーレは周りの者にも分かるように、言葉を選ぶ。


「それはエルフだよ、ヘルト君。人間(ヒューマン)なら一二〇歳ほど長命な者もいるだろう? エルフならその約一〇倍……どうだい?」

「……えっと、壱、弐――――そうか沢山だな、うん(指足りねえ)……ってか、バイってなんすか? ”両手持ち”ってことかな?」


 ヘルトの知能は思いのほか低いようだ。

 両手持ち(バイセクシャル)については、伏せておこう。おバカな癖に無駄な知識を得てるヘルトに、皆声をバラりと乾杯した。

 そもそも、その計算式を学んでないヘルトにとっては酷である。しかし、モモ以外は数秒も待たずに計算できたといえよう。


 余談ではあるが、シンパティーアにおいて記憶さえあれば計算式など教えずして身に着けているもの。それゆえに簡単な計算なら教授する必要もないのだ。無能と呼ばれる所以は、このような事柄にも関わってくるとも思える。


 ここは「可哀想だな」と、捨てられた子犬をみるような眼で全員見守った。

 友情が深まる……


 何はともあれエルフは長命だ。そのエルフのなかでも長老と呼ばれる高齢者がいるのだが、千歳以上ではないかと考えられる。従って、ハルバトーレはその長老なる者なら英雄スーラのことに詳しいのではないかと。


 しかし、エルフの森へ辿り着くには危険が伴う。

 それを考慮し、現在では互いの連携を深めているところだ。


 ヘルトは変わる……本物の英雄となることに思いを馳せ……


【やがて、このシンパティーアには大きな厄災が訪れるだろう】


 ビアドは己のビフォアにより、そう予言した。


 ……それぞれの想いを(つむぎ)、エルフの森へ旅立つ。


最後までお読みいただきありがとうございました!

切りが良いので、一旦完結させようと思います。

この先の話をもっと色濃くしたいということもあり、更新期間(創作期間)が開いてしまいそうな感じですので……楽しみにしていた方々には申し訳ありません(今月中に開始できたらと思っています……予定)。

続編につきましては、開始次第作品内でリンク、及び告知する予定です。


もっと勉強し、皆様の満足いくような作品を目指しつつも、至らない点を把握するため評価していただけたら幸いです(評価するほどの作品ではないかもしれませんが……)。暖かな目で見守ってくださいませ。

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