転生輪廻
――シンパティーア
中世の趣がある剣と魔法の世界。
一〇〇〇年前、世界を統一させ英雄と呼ばれた一国の王が『共感と親愛で満ち溢れるように』と願って、シンパティーアと名付けた。
……とはいえ、そんな願いとは程遠い別の呼び名がある。
【死後の世界】
シンパティーアの人々は一度死を体験しているが、それは決して霊体などでは無く、命を持った生命体だ。
普通に生まれ、普通に老い、寿命がくれば死を迎える。
他の世界での人間と然ほど変わりはないだろう。
それでも死後の世界と呼ばれる所以は……
転生した者しか存在しないからである。
一般的に『転生輪廻』とは、死んであの世に還った霊魂が、この世に何度も生まれ変わってくることを言うが、記憶が残っている者など先ずいないだろう。
しかし、シンパティーアの人々は記憶を保持したまま、あらゆる世界から転生してきたものばかり。
つまり、死の原因まで記憶していることから『死後の世界』と呼ばれる。
なぜ、このような世界が存在するのかは分からない。
生まれてすぐ会話することは可能だが、もとの世界が異なるため会話できるまでには数カ月ほどかかる。
しかし、身体を自由に動かせる歳となれば、三歳ほどでも筋力を必要としない職業なら一流と呼ばれる者もいる。
そんな転生前の記憶を使ったスキルを『ビフォア』又は『ビフォー』という。
シンパティーアにおいての主流は『ビフォア』である。
ビフォアを持って生まれた者の全てが才能のある者とは限らない。
転生前に普通だった者が、もともと才能のある者に敵うはずもなく、普通の人間として生きてゆくのが一般民となる。このシンパティーアに限り、生後数か月で会話できることなど至って当たり前のことなのだから、それを”才”とは呼ばないのだ。
簡潔に『普通の基準値が高いだけ』とも言えよう。
まるで、雲泥の学力差がある学校へ放り込まれた気分である。
とはいえ、このシンパティーアにはビフォアによって”才”が満ち溢れていることは確かだ。
――今日も何処かで、新しい転生者が誕生するようだ。
小さな村の貧しい民家で、ひっそりと産声をあげるのだろう。
彼はどのような”才”を持って生まれ、今後どのような成長を遂げるのだろうか……
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