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七つの命の使い方  作者: 邪狗
2/2

その2

 密命を帯びた二人の重鎮は、いきなりウィンドウブル伯爵の処へ押し掛けたのではなく、先にティルドの王に会っている。友好国の大貴族の子息を貰い受けようと謂うのだから、根回しに抜かりがあってはいけない。

 しかしその時点では、兄弟揃って落とし種とは誰も思っていなかった。なので、落とし種である方の公子を貰い受ける、とティルド王とは話が付いていた。伯爵の了解が得られればとの条件は付いたが、妥当な物だろう。一応のお墨付きである、伯爵も無下には出来ない。

 それが「二人とも」と謂うのだ。伯爵と血が繋がってはいない、と判明したとは謂え正式な公子である。始めから承知の上で公子と認めたとさえ謂える。さすがに「二人とも貰い受ける」のには差し障りがある。大家の跡取りを根刮ぎかっ浚う訳にはいかない。どちらを選ぶか、そこで紛糾した。

 伯爵の二人の奥方がどちらも退かなかったからである。重鎮二人は取り合えず役目を果たしたと考え帰国した。「託宣の真偽を確かめ、真なら太孫を引き取る道筋を付けよって、お達しでしたからね、完了です。」臨時さんの言。


 女行商人の目的は、この村の唯一の特産らしい特産、魔積膏の買い付けであった。魔力が凝縮されて樹脂の様に成った物である。

 取り立ての松脂の様に柔らかいが、べとべとと手に引っ付く事はない。粘土の様に成型する事が出来る。熱を加えると固く為るが温度と時間で性質と固さが変わってくる。

 真球に転がして湯煎した物は、ぽんぽんと良く弾み貴族や裕福な家の子弟の遊び道具として普及しつつある。

 最近になって獣脂で揚げると謂う技法が開発された。温度を変えて何度か揚げる事で折れ難く曲がり難い、さらには良く切れる剣を作る事も可能である。しかし軽すぎて斬撃に速度が載らない、載らなければせっかくの切れ味も中途で止まってしまう。

 芯材に軟鋼を使って見た処で今度は複合素材特有の技術的な難題が待ち受けているのは、眼に見えている。そもそも、折れない曲がらない良く切れる、と謂った処で良い鍛冶の打った物とさほど変わりはしないのだ。いや、刃零れが目立つと謂うから粘りが足りていない分、劣る。

 そんな事情があって、魔積剣は主に非力な子女の護身用に使われている。評判は良いようだ。

 魔積膏の性質には、もう一つ重要な物があって賢明な読者諸氏はお気づきの様に、魔法に関する物だ。持ち主の思念を受けて魔法を発動させる。手練れであれば効果的に、それなりの使い手であればそれなりに発動する。杖なりに適切な加工を施したものを着ければ可なりの力を得られる。

 尤も、それは精製された上質な物の事で、行商人の目当ては、発動素材としては不十分な二級品、精製物を濾し取った後の廃膏である。加工のしやすさは変わらないのだから、大いに需要がある。簡単な足漕ぎ轆轤を回し、湯煎して出来た柔軟な割れない壷は爆発的に売れた。寧ろ、まだ爆発中である。

 「手伝うにゃ」と言って付いてきたアイズだが、転げた商品サンプルの弾み玉を追い掛けて走り回っている。それ、邪魔にしかなってないぞ。


 シリュリューと謂う魔女がいる。いると謂うより、何処にも居ない。肉体を持っていないのだ。

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