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そんなこんなで雌獅子の仇の家に到着したのは翌日、時刻は午前十時過ぎだった。
現在の持ち物は、親切なオバサン達に買ってもらった新品の服と肩掛け鞄。素敵な事に、中の財布は紙幣ではち切れそうだ。やっぱり先立つ物は現金だよね☆
(にしても汚い家だなあ。一応不動産屋で確認したから、ここで合っている筈だけど……)
数十メートル奥の隣家はそうでもないのに、ゴリラ宅の周辺だけが雑草畑と化している。元は白かったであろう壁も雨風でペンキが剥がれ、所々細かい罅も入っていた。
(猿だから雨風さえ凌げれば充分って理屈?うーん、こんな廃屋を焼き落とした所で、復讐になるかどうか凄く微妙だぞ……)
クローディアの小屋でさえ、これに比べればずっと人家に近い。ま、折角一日掛かって訪問したんだ。覗くだけ覗いてみよう。
ガチャッ。「え」キィ……。「嘘でしょ?無用心だなあ」
施錠されていないドアを開き、薄闇の内へと身を滑り込ませる。
まず見えたのは正面の長さ約五メートルの廊下。その先はどうやらリビングのようだ。全ての窓に掛けられた分厚いカーテンのせいで、家屋内はかなり暗い。取り敢えず奥まで行って一枚開けるか。まだ午前中だし、それで光量は充分足りるだろう。
「おじゃましまーす……って、流石に誰もいないか」
廊下の向かって左手には二つのドア。その手前側から漂う生ゴミの臭いに辟易しながら、遅ればせながら挨拶。一メートル先の奥側を覗くと、こちらはバスとトイレのようだ。用は無いのでスルー。
リビングへ到達するまでに段々と目が慣れ、床のそこら中に散らばったゴミが嫌でも視認出来た。一際大きな物を跨ぎ、埃塗れのカーテンに手を掛ける。そして、
バッ!「………あぁ……」
久し振りに沸き上がる感情に、反射的に片手で額を押さえる。そう……とっくに飽き飽きしているんだ、こんな光景は。