進みだす者達
「ガァルル、この先に瑠璃ちゃんがいるのね?」
「まだ匂いが薄いから遠いけど間違いないガル!」
魔須美の質問にガァルルが答えている。
「よし、この蔦の前でただ立ってる間にも瑠璃ちゃんが一人寂しい思いをしているかもしれない。他に道がないみたいだからここの道を切り開いていこう」
僕は、聖剣を抜き両手で持とうとする。しかし、
「お、重い……」
女体化してしまった僕には、自分の持ち物であったものも思うように使いこなせないみたいだった。
「軽量化しないとだめみたいね」
なぎさの言う通り武器を新しくしなければいけないみたいだ。僕は、懐からレベル一でも使いこなせる短剣を取り出す。
「僕はこれで蔦を斬っていくよ」
「ちょっと、待って!!」
魔須美が僕を止める。
「あたしが、氷魔法で一気に蔦をぶち壊すわ!!アイスインパクト!!!!!」
呪文を唱えた瞬間にどでかい氷の塊が出てくる。そして、ドーンッとでかい音と共に目の前の蔦をブチブチとぶち破っていく。
「これで、道は出来たわ」
「よし行こう」
僕たちは蔦のトンネルとなったところを歩き出した。
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「んっ……」
目が覚めると自分は、コンクリートの上に寝かされていた。何やら建物の中みたい。壁には蔦かずらや木の根っこみたいなものが張り巡らされている。ここは、地下なんだろうか。
自分はなんでこんなところにいるんだろう。戦斗といや”Saints”のみんなとガァルルと一緒にいたはずなのに。
「……い、いたっ……」
立ち上がろうとすると、足に痛みが走る。ズボンをめくって見て見ると輪っか状に赤く内出血を起こしているみたい。
「そっか……植物に捕まえられて……」
自分に起きた出来事を思いだした。変な植物にさらわれた後、皆とはぐれてしまったのだ。
「戻らな……きゃ……」
急いでここを出ようと立ち上がる。
「うぅ……」
すると、木の根っこの後ろの方でうめき声がする。
「だ……だれ?」
恐る恐る除いてみる。
「はっ……」
植物の蔓で出来た網のようなもので吊るされている人達がいっぱいいた。
「……に、逃げなきゃ……」
異様な光景に思わず走り出す。しかし、
「……ッ!?」
何かに足を掴まれて宙づりにされてしまう。
「おや、お目覚めかな?」
奥の自動ドアらしきとこらから左手をピーターパンのフック船長みたいにしている手のおじさんが近づいてくる。服装も海賊みたいだ。山賊ではない。
「ようこそ、私の船へ。新しい肥やしちゃん」
ニコニコと両手を広げて誇らしげに笑っていた。
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「はあああああああああああああああああああ!!」
俺は、十年ぶりに再会した少女いや、彼女のまっすぐ伸びてくる剣を逆手で抜刀したエクスカリバーで受け止める。
「今は、過程も言い訳もいらない。ただ、お前を心行くまで斬らせろ!!」
相手も興奮しているみたいだ、俺と同じ闘争本能が感じ取れる。
「あぁ、俺も今誰でもいいからぶった斬りたい衝動に駆られてたんだよっ!!」
俺と彼女の剣は十年ぶりに交わり始めた。





