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ゲームがリアルになった世界で最高実力者だった俺はチートを使って生き残る  作者: アニマ
第一章 聖なる密林《ハイリガー・ジュンゲル》
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フラストレーション


俺たちは匂いを嗅ぎながら瑠璃ちゃんを辿っているガァルルの後ろについていた。


しかし、なぜだろう。瑠璃ちゃんがいなくなってからなのか知らないが、胸の中のムカムカが収まらない。こんなことになったのは初めてなので戸惑いすらもある。


「戦斗大丈夫?」


「あ、あぁ……」


その、イライラが態度に出ていたのだろうか。魔須美が心配そうにきいてくる。力なく頷くが突発的に湧き出た怒りの感情は今もまだあふれ出てくる。



俺の目の前では四つん這いになりながら、必死に地面や空中の匂いを嗅ぎながら進むガァルルの姿が見える。今は、匂いを探っているのかその場で立ち止まりクンクンと嗅いでいる。


「なぁ、もっと早く進めないのか」


「少し待つガル!!匂いが今薄くてわからないんだガル!!」


「今もこうしているうちに瑠璃ちゃんが危ない目にあってるかもしれないんだぞ!」


「ちょっと戦斗おちついて……」


「戦斗君どうしたんだい?」


「戦斗君……。瑠々……、ガァルルさんも頑張っているんだし見守ってあげようよ」


「うるせぇ!!!てめらも今この場でたたっきるぞ!!」


「えっ……」


魔須美、結城、なぎさが啞然とした顔で俺を見ていた。自分でもなんでそんなことを口走ったのか、わからない。


「ッ……!!わりぃ……。ちょっと頭冷やしてくるから先行っててくれ」


俺は、四人を残してこの場を去ろうとする。


「待って、戦斗がいなければ――」


「食人木はそう強いモンスターでもない。魔須美となぎさの”聖女の祈り”の恩恵が与えられた結城なら倒せない敵でもない。それに今はガァルルもいる。それじゃ……」


「ちょっと待っ――、戦斗!!」


俺は、魔須美の話を遮りこの場を後にした。




四人からどれくらい離れただろうか。気が付くと川の近くまで戻っていた。しかし、自分が知っている場所ではない。なぜなら、その川の先は滝へと続いているみたいだからだ。


「はぁ、人の命がかかっているのに俺は何をしているんだ」


俺は、近くのでっかい岩に腰かける。自分のさっきからの行動が感情に任せすぎていて全く理論的ではないと気が付いていたからだ。


「くっそ。なんだか自分にもイライラしてきやがった」


怒りの矛先が変わっただけで何も変化していない。闘争本能が呼び覚まされているようだった。


何か物にあたりたい。俺は、怒りを吹き飛ばすために自分の右太ももを拳で殴りつける。痛みが広がるだけでなんの解決にもならなかった。


「んっ!!」


しかし、俺は、右足の踝より少し上の部分が視界に入り込む。小さく丸く赤いポツッとしたものが見えていた。そこからはかすかに血が出た痕があり小さい傷口だということが分かった。そこは、さっき蔦が纏わりついていた場所だった。


「これってもしかして……」


俺は、頭をフル回転させる。食人木の中では、プレイヤーをおびき出すため闘争本能を最大限にまで引き上げ、そのプレイヤーは攻撃することしか頭になくなってしまうのだ。それは、なぜか。



闘いを求めるプレイヤーがその食人木の前に必ず訪れるからだ。



食虫植物を思い出してほしい。甘い匂いなどで昆虫をおびき出して捕まて捕食する。この、プレイヤーを狂わせるのは、食人木がプレイヤーをおびき出すための罠なのだ。


その食人木は、蔦についている細かい棘や、花粉をプレイヤーの体内に侵入させ感情のステータスを狂わせるモンスターだった。


しかも、そのプレイヤーは冷静さに欠けている。食人木の思うつぼなのである。


「くっそ!!早くそれに気が付けば!!!」


「早く四人の前に急がなくては」と俺は、岩から立ち上がる。



「やっと、見つけた……」



すると、俺の背後から女性の声がする。


「誰だ」


俺は振り返ると、白く軽い服や鎧を纏った女性がいる。しかし、その白いや鎧には黄色い何かの植物と思われる花粉で汚れているのが見受けられる。


「約十年ぶりに、会えた」


私怨がこもった人間をやっと見つけたような声音でつぶやかれる。どうやら、口調と表情から察するに歓迎ムードではないらしい。



「十年前?なんの話だ」


「忘れたとは言わせない……セント」


「は?」


「お母さんの仇!!!」


そう言って、彼女は、剣を俺に向けて近づいてくる。


その一言で俺は察した。目の前にいる女の子は俺が最後に参加した大会の決勝戦で戦った、俺がダブマスの世界から足を洗う一つの要因となった少女であることが……!!

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