動き出す者たち
「戦斗!」「戦斗君」「戦斗君……」
俺に続いて三人も茂みの中に来たようだ。
「る、瑠璃はどこガル?」
ガァルルが心配そうに辺りを見渡す。
「くっそ!!」
「ちょっと、戦斗落ち着いて。瑠璃ちゃんがどこにいるかわからないのに炎で焼き尽くしたら危険でしょ」
俺は、火の魔法を使い見晴らしの悪くさせている要因の草を焼き払おうとするも魔須美に止められる。
「そうだね、まずは落ち着こう戦斗君。まずは、スキルの”サーチ”を使って探してみないか」
「ふぅ……、そうだな。サンキューな結城」
俺は、焦りすぎて冷静な判断を下せなくなっていたらしい。
「ッ!?どうやら、この区間では、”サーチ”のスキルが使えないみたいだ」
ダブマスでは、所々にスキルが使えない空間が存在した。聖域だったり、電波をジャミングする人工物が存在する場所だったりと……。ここは、森なので、なんらかの聖域になっているのではないかと推測した。
「くっそ!!この蔦野郎が――」
俺は足に纏まりついていた蔦をブチブチとはぎ取る。
「食人木の一種のようだな」
「しょくじん……ぼく……なにガル?」
「人や大型動物を食べちゃうって言われる植物よ」
「なぎさのいう通り植物型のモンスターだ。動物型と違い知能は高くなく、理性などは持っていない」
前に魔須美が攫われたことがあったが、まだ相手が人間だったので少しだけ余裕があったのかもしれない。しかし、今の相手はモンスターだと推測していた。モンスターには捕食するという欲求に忠実な生き物である。
「一刻も早く瑠璃ちゃんを見つけなければいけないのに――。くっそ……」
「戦斗、落ち着いて」
「そうだよ、戦斗君らしくないよ」
自分でも気が付いていたが、魔須美と結城に言われたように今の俺はいつもより感情を吐露させまくっている。明らかにおかしい。
「あの……いいガルか?」
ガァルルが伏せ気味につぶやく。
「なんだ?」
「ガァルルが瑠璃の匂いを覚えてるガル!その匂いを追いかければ瑠璃の見つけれるガル!だから、落ち着くガル」
ガァルルにも心配されていたようだ。
「すまん……、冷静さを欠けていたみたいだ。ガァルル瑠璃ちゃんのところまで案内してくれ」
「任せるガル!!」
俺は、まだ消え去らない旨のもやもやを抱えたまま先頭をガァルルに譲った。
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(おかしい……ここに来てから)
私は、彼がここにいるとあいりから情報を得たので、一人で現場に来ていた。
現場に乗り込んだ理由は、事実を確認したい、彼と話がしたいそれだけだった。
しかし、今は何か違う。もっとどす黒い感情が私の中を渦巻いていた。
「……彼を倒したい」
その気持ちの方が大きくなっている気がした。
森の中を歩く一人の女の子を木の陰から、眺めている一人の男の子がいた。
「キミには期待しているんだよ。僕を楽しませてくれるって信じているからね……。銀河昴ちゃん」
彼は、そう言うとメガネをかけなおしニヤリと笑った。





