捜索二日目
次の日の朝になり、俺と瑠璃ちゃんは昨日琉々奈に襲われた地に降り立っていた。昨日の続きを再開させるためだ。
家の中に籠りっきりなのも悪いので、遊香ちゃんを誘おうとしたが、いつも通りお留守番役を自分から名乗り出たので今日もいない。
「……♪」
土手のようになった箇所を俺らは歩きはじめた。瑠璃ちゃんは口には出さないものの「今日こそ見つけ出すぞ」と張り切っているように見える。
俺は、何が襲いかかってきてもいいように、いつも以上に神経を尖らせる。琉々奈は然り、モンスターや天使のようなよくわからない奴等もいつ襲ってきてもおかしくはないからだ。
一時間近く、歩いただろうか。
「んっ……見て……あれ」
瑠璃ちゃんが袖をちょんちょんと引っ張って何やら川岸方面を指で指している。なにやら、マングローブの根が隠れ家になるように張り巡らされている。
目を凝らしてよく見てみると、中には、幼稚園児くらいの子供一人は通れるくらいの穴がたくさん存在している。
「ぜってぇ、水性生物型のモンスターの住みかだろ。さっさと行った方がいいな」
俺は、無視してその場を立ち去ろうとすると、瑠璃ちゃんが止める。
「あそこの中に……一輪だけ……"祈りの花"がある」
根っこの下で暗くなった箇所をよく見てみるとうっすらと薄ピンク色と白い色のした花が咲いていることが確認できる。
昨日と違い呆気なく見つかって、なんだか、拍子抜けしてしまう。
しかし、近くにモンスターの住みかがあるとなると取りに行きにくいが。
「ぜってぇ、採りに行ったら絶対めんどくさくなるやつだろ」
足を踏み入れた瞬間、モンスターが出現して「戦闘開始!」という未来しか見えない。
今の段階で戦闘は出来る限り避けたかった。他の敵を呼びつけてしまうかもしれないし、瑠璃ちゃんがいるので穏便に済ませれるならそうしたいと思っていたからだ。
「ちなみにあの花一個で三人治せるのか?」
「ううん……一人一個分……必要」
となると、これを、合わせてあと二個採らなければいけなくなる。本当は、違う場所まで探して終わりにしたかったが、複数個必要となると出来るだけ早く確保したい。
「あんまり戦闘に巻き込まれたくないから、ワープで行って、速攻ワープで帰ってくるけど、根っこごと採ればいいのか?」
「花びらが……必要なだけだから……茎からで……だいじょうぶ」
「そうか、わかった」
俺はそう言うと、ワープして、一気にマングローブの根っこの下、"祈りの花"の真ん前に到着する。
そして、俺は、茎から速攻ぶち抜いて瑠璃ちゃんの前まで、ワープで戻る。
「はい。ちなみに、これ鮮度とか大丈夫か?」
「三日……以内なら……大丈夫」
「そうか、なら残りの二つもちゃちゃっと見つけて終わらせれるかもしれないな」
そう言って歩きだそうとすると、ドドドドドッ!と何かの大群が近づいてくる音がする。
「なぁ、瑠璃ちゃん。嫌な予感がするから、ちょっと泉まで戻っていいか?」
「ん……わかった……」
俺は転移用の穴を作り出す。早くここからいなくなろうとすると、チャキチャキチャキとなにやらハサミのような音がする。
振り返ると、そこには、穴から出てきたであろう蟹のモンスターがゾロゾロとこっちに向かってくる。
「やばい、逃げるぞ」
俺は、瑠璃ちゃんを抱き抱えて転移の穴をくぐろうとすると、その先でなにやら俺を待ち構えて突っ立ってる奴がいることに気がつく。
それは、俺達に対して牙を見せ、威嚇している琉々奈だった。
「人間……やっぱり……嘘ついた」
「嘘?なんのことだ?」
「その花は森のもの……その花ガァルルに返せ」
琉々奈が飛びかかってくる。
「くっ!!!まじかよ!!」
俺は、後ろから迫り来る大群の蟹と琉々奈によって挟み撃ちにされていた。





