野生の少女
俺と琉々奈は、対峙していた。どちらも、動こうとしない。
琉々奈は、顔に泥がついてたりして、汚れていたがそれでも、顔が整っていのが容易にしてわかる。長くてさらさらだったと思われる髪は獣のようにべたついている。
服装は、毛皮の生えたさらしとハーフパンツだけらしく、肌の露出が多い。頭には狼の耳とお尻からはモフモフの尻尾が生えている。今は、尻尾は威嚇のためか逆立っているが――
「俺は、闘いに来たんじゃない。お前と話に来たんだ」
俺は、手をゆっくり上げ、武器をなにも持っていないことを証明する。
俺が手を上げたことにより、自分が少し優位な立場になったとわかった琉々奈は少し、筋肉の緊張を緩めたように見えたが目は、つり上がり、四つん這いで行う威嚇は継続されたままだ。
「今日機嫌が悪いんだったら、明日また来る。お前と話をしに――」
俺は、そう言いゆっくりと後退り距離をとる。
「嘘……にんげんは……嘘つく。だから信じれないガルッ!」
はじめて彼女の声が発せられる。怒りという感情が含まれた声だった。瑠璃ちゃんのように途切れ途切れではあるが、瑠璃ちゃんよりも言葉の発音や滑舌が悪く、まだ発達途中の幼い子供に近いしゃべり方だった。語尾になんかついているが……。
「信じられない?何かあったのか?」
俺は、会話を試みようと話を続ける。
「ここ……聖なる密林の森を荒らした……ガァルルはそれが許せない」
ガァルルは牙王琉々奈のダブマス時のプレイヤー名だろう。それがそのまま名前になったのだと考えられる。
「荒らした?他にも人間がここに来たのか?」
「そうガル!だから、人間はガァルルの敵ガル!」
そう言って口を開け飛びついてこようとしていた。
「ッ!!?」
しかし、俺は、他の異変に気がつく。水面が不自然に揺れ、普通にしていれば気がつかない波が立っている。川の深い中央の部分では黒くでかい影が蠢いている。琉々奈はそれらに気がついていない。
「琉々奈!!危ない!!」
そして、それは、大きな口を開け川中央の深い部分から顔を出す。大きな鯰型のモンスターだった。 それは、琉々奈を、丸のみにしようとしていた。
「くそっ!!」
俺は、瞬時にワープして琉々奈を突き飛ばす。
「に……人間?」
突き飛ばされた等の本人は、信じられないものをみたような目で驚く。
「ちっ!思ったよりでけぇな――!!グッ!!!」
俺は、そのまま鯰に吹き飛ばされ川へと流される。





