遭遇
俺たちは、あのまま捜索を続けたが進捗はなかった。日も傾きかけて、真っ赤な夕日の光が木々の隙間からもれて差し込まれている。
「瑠璃ちゃん、今日はひとまず帰って明日またさがしに来よう」
すると、瑠璃ちゃんはふるふると首を横に振る。
「早く治して……あげないと……みんなが
……かわいそう」
「瑠璃ちゃん……」
「それに……自分がやりたいから……こうして探してるだけだから……戦斗が帰るなら瑠璃一人でも探す」
「そっか、そうだな。確かに三人を早く治してあげたい気持ちは俺もある。もう少しだけ粘ってみるか」
おんぶからおりようとする瑠璃ちゃんを制止してい言う。
その時、
ガサガサガサッ!
「――――ッ!」
俺は、音がした方向を振り向く。そこは、俺の顔の高さまで草が生い茂っていて見晴らしが悪い。何が潜んでいてもおかしくない状況だった。
「瑠璃ちゃん、ごめん、ちょっとだけおりてくれるかな」
そう言うと素直に従い自分の足で立った。
俺は、警戒したままその空間を見つめる。しかし、どちらも先に動き出そうとはしてないみたいだ。
「昨日現れたよくわからん天使か、それともモンスターか?もしかしたら、俺らが最初にここに来た理由の人物かもしれないな」
緊迫した空気はまだこの場をはりつめさせている。
「ガァルルルッ!」
獣が出す威嚇の声が茂みの中から発せられる。しかし、それは低く野太い声ではなく、高い人間の女性の声に感じられた。
「誰か……いるのか?」
俺の問いかけに沈黙で答える。それは、言葉が通じない者の返答なのか、それとも威嚇したまま緊張をといていないのかはわからない。
俺は、魔法攻撃で草むらから引きずりだそうかと考えるも躊躇う。彼女と闘うために会いに来たわけではない。
「俺は、君のお父さんにあってきた。そして、君に話したいことがある。だから、すこしだ――!!!」
草むらからなにかが飛び出してくる。それは、猛スピードで俺に迫ってくる。鋭い爪を光らせその先端が俺に向く。しかし、俺だけではなく瑠璃ちゃんにもその刃は向けられていることを悟る。
「瑠璃ちゃん!ごめん!!!」
俺は、拠点に転移する穴を空け、瑠璃ちゃんを押し込む。
「っ……!!?」
瑠璃ちゃんはなにか言いたげに口を開くも、無情にも穴は閉じられる。
その、刹那俺の首筋を鋭利な爪がかすっていく。寸前のところで避けたのだ。
何者が浅い水面に着地し、水しぶきがあがる。俺は、その者の全体像を確認する。
その者は水しぶきによって長い髪を濡らしながらこちらを振り向く。口から八重歯が発達したのか鋭い牙が下唇に触れている。そして、喉を「ガルル」と鳴らしこちらを睨み付けている。どうやら、獣人のようだ。一目見たことない俺でももうわかる。
「どうやら、探し人は一日遅れで自分から見つかりに来たみたいだな――――――。牙王琉々奈!!」
彼女は喉を鳴らすだけで返答はしなかった。





