花を求めて
あの後、もう一眠りして早朝になり俺と遊香ちゃん、瑠璃ちゃんは起床していた。
「瑠璃ちゃん、はじめて一緒に旅に出るけど大丈夫か?」
無言でこくこくと頷くのを見て心の準備もう整っていることがわかる。
「よし、じゃあ、出発し――」
ちょんちょんと袖を引っ張られる感覚がする。その方向を見るとなぎさが立っていた。魔須美と結城にはスリープをかけたがなぎさはその時寝ていてかけていなかった。
「ど、どうしたなぎさ」
「心理テストをします」
「お、おぅ……、いきなりだな」
「私のことを考えてください」
「あぁ、考えた」
「それがあなたの好きな人です。どうですか、相思相愛ですよ私たち!!!」
「――――スリープ!」
俺は、なぎさも寝かせつけた。
あの後、俺たちは転移する穴から、昨日訪れた泉の前へと降り立った。
拠点の方では、睡眠中の三人とお留守番をしている遊香ちゃんがいるから大丈夫だろう。
「あっ……、マングローブ」
瑠璃ちゃんがとてとてと小さく可愛らしく、泉から繋がる川に沿って生えている木に駆け寄っていく。
「なんかの薬に使えるのか?」
「ううん……瑠璃が好きだから……みてた」
「そうか……」
瑠璃ちゃんから言わせれば久しぶりに外で遊び回れるのだ。多少は羽目を外してもいいだろうと俺は思っていた。
木に生えている苔や泉の中を覗きこんだり楽しそうである。
「生き物が好きなのか?」
「うん……大好き」
水に手を突っ込んで思ったよりも冷たかったのか体をブルブルと振るわせたりしている。本人が楽しそうならそれで満足である。
俺は、警戒の意もこめてあたりを見回した。このまま何事もなく、昨日みたくモンスターやキューピットの矢持ちと遭遇せずに終わって欲しいのだがその願いが叶うかはちょっとわからない。
"五感強化"で探っても怪しいところは見当たらなかった。
「よし、そろそろ薬草を探しに行こう」
「うん……」
ちょっと残念そうな顔をしたのが心にくるが、ぐっと我慢した。
俺らは川に沿って歩いていた。どうやら、水辺に咲く植物らしい。
「その、植物ってはどんな種類なんだ」
「"祈りの花"と呼ばれるダブマスのレア植物」
瑠璃ちゃんは答える。売ったら高価なものとしか俺は認識していなかったからあまり詳しくはない。なんなら、その植物を見てもわからないかもしれない。
「どれくらいの頻度で生えるもんなんだ?」
「わからない……。けど、1/10,000,000の確率とか言われてる」
1/10,000,000は、数字を7つ選ぶ宝くじの一等を当てる確率と同じである。少し、非現実的な数字が出てきて面食らってしまう。
「大丈夫……瑠璃達が必ず見つけるから」
「そうだな、俺たちで見つけ出そう」
俺は、目の前で無限に続くのではないかと思えるくらいの長い川を見つめる。





