恋愛感情継続中
「あっ、皆さんお帰りなさい。おつかれさまで……」
帰って来た俺らの状況を見て遊香ちゃんは絶句する。そりゃ、俺を中心に皆デレデレして引っ付いてたらそうなるだろう。
「み、みなさんどうしたんですか?」
「ちょっと奇襲をうけちゃってね。ジョブが"薬草師"である瑠璃ちゃんなら、なんとかできないかなって……」
俺は、瑠璃ちゃんの方を見る。すると、そこには、リスのようにほっぺを膨らませた瑠璃ちゃんがいた。なにやら、怒っているらしい。
「ずるい……わたしも……抱きつきたい」
そういうと、瑠璃ちゃんは空いている俺の背中か目掛けてやってくる。そして、まだ発達途中の小さくて温かい体がちょこんとくっついてくる。
「え、えぇ?」
「いや……だった?」
「いや、嫌じゃないっていうか困惑してるっていうか」
今までほとんどの人間に相手にされていなかった俺は、一気に偽りのモテ期が来てしまって、戸惑う。さらに、瑠璃ちゃんはキューピットの矢をうけてないはずなのに、甘えてきていて完璧に俺の思考回路がショートしそうになる。
「ず、ずるい!!あたしは、ずっと抱きついてるんだからあたしにもかまってよね」
「魔須美はいいから俺から離れろ。その、当たってんだよ……。い、色んなとこが――」
「当ててんのよ!!」
「じゃあやめろよ!!」
「戦斗君は僕のこと構ってくれないじゃないか!!」
「俺は、そっちの気はない。お前は、性別からやり直してくれ!!」
「ぅっ!!」
男なのにショックを受けた結城はしょんぼりと肩を落としたまま隅っこにとぼとぼと歩いていく。なにやら、「女の子になれば……」とかいってるような気がしたが気のせいだろう。
「というか、なぎさお前も離れてくれ。というか、服を着てくれ」
俺は、結城から解放された左手でなぎさの服を作り出し渡す。
「はぁん!!戦斗君が作ってくれた服~~」
おかしな声をあげて俺から受けとる。いいから、早く着てくれ。
「た、大変ですね」
遊香ちゃんにひかれているが、俺は、なにも悪いことはしていない。
「る、瑠璃ちゃん、この状況なんとかならないかな」
「……」
沈黙したまま俺の背中に顔を埋めている。
「あぁ~、手伝ってくれたらなんかご褒美あげるよ」
「ほん……と?」
よし、食いついてきた。
「あぁ、お菓子あげる」
「お子さまじゃないから……いらない」
「うぐっ……、じゃあ好きなものあげる」
プイッとそっぽ向かれる。物でつるのはだめらしい。
「じゃあ、お願い事をひとつだけきくっていうのは……?もちろん、難しいことは最初から出来ないって言ってノーカンにするから」
あっち方向を向いていた顔のまま、目線はゆっくりとこちらを見てくる。
「ほ……ほんと?」
「あぁ、本当だ」
「じゃあ、願い事決まった」
そう言って俺から離れる。
「あんまり難しいことは……」
「大丈夫……出来るから」
「そっかなら嬉しいな」
「ずるい!!あたしも願いをきいてよ!!!」
「魔須美は、もう高校生なんだから我慢してくれよ!」
「えっとねぇ、戦斗との子……」
「はーい、ストップ」
俺は、空いてる左手で魔須美の口を塞ぐ。
「ここにある薬草だけではこれを治すのは調合出来ない……。相当レアな植物でないとダメみたい……」
瑠璃ちゃんが、倉庫にある物を見て言う。俺も"状態異常回復"を三人にかけたが治らないので薄々そう感づいていた。
「明日にでも一緒に取りに行こう。で、それは、どこに生息してるんだ?」
「ジャングルのなか……」
「お、おぅ……」
明日もジャングルにいくことが決定した。





