ツンデレ天使
俺は、矢が向けられ、硬直していた。決して、敵と対峙しているからではない。本当に動けないのだった。
「魔須美、なぎさ、結城いいから俺から離れろ!!今そんな状況じゃないんだって!!!」
「やだ!!戦斗と一緒にあたしも死ぬ!!」
「僕だって戦斗君と一緒に人生を分かち合うんだ!!」
「戦斗君、あったかい……」
「なんなんだよ!!お前ら!!」
「あんた達、あいりを無視しすぎでしょ!!ていうか、セントくんは早くあいりの虜になんなさーーーーい!!!」
俺らがイチャイチャしてるのを見て天使が感情を露にする。
この光景を見て苛立っているのか、弓が引かれ、矢が真っ直ぐ飛んでくる。
しかし、俺としては非常にまずい。動けないこの状況どうするか。
あいりとの距離は百メートル。俺は、七十メートル付近にバリアを瞬時にはるがぶち壊されてしまう。
しかし、矢の勢いは止まらない。俺の目と鼻の先まで矢は迫っていた。
「こうなれば!!!」
俺は、目の前の空中に穴を開ける。座標を指定するとそこへと、通じる穴だ。しかし、俺は重大なミスに気がつく。
「あ、やべっ!」
いつもカウンターとして使っていた癖で出現先をあいりの背中へと指定してしまった。
「へっ!!」
あいりは、素っ頓狂な声をあげるが、もう遅い。
「んっ……!!!うぅっ……」
矢は穴を通り抜けてあいりへと突き刺さる。矢を受けたあいりは、だらんと手をぶら下げる。そして、何やら俺から視線を外しもじもじとしている。
「お、おい。大丈夫か?キューピットの矢の効果とかの影響じゃないよな?」
俺は、心配そうに声をかける。
「か、勘違いしないでよね。べ、別にセントくんのこと好きじゃないんだからねっ!!!」
あわてふためいた元気そうな声がかえってくる。
「いや、知ってるわ!!お前は敵なんだから」
そもそも、好きだったらヤンデレなどの特殊な人でないと攻撃してこない。
「うきーーーー!!そうだけどそうじゃないの!!もう知らない!!ふんっだ!!」
そう言ってあいりは飛び去っていく。
というか、キューピットの矢の効果がないみたいでひとまずはよかった。もし、効果があったらこの三人みたいになっていたのかもしれないと考えると恐ろしい。
「とりあえず、この状態だったら戦闘になってもきついから拠点に帰るとするか」
俺は、目の前にでかい、ワープホールを作り出した。
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あいり、なんかさっきからおかしいみたい。心拍数がいつもよりちょっと早くなって胸が痛い。こんなことはじめてなのに……。
「なぁ、どっかから帰ってきたんはええけどさっきから何顔赤くしてんねん?ずっと神谷戦斗の世界大会優勝動画見てなにしてんねん?」
獣人のあんぽんたんが話しかけてくる。
「うっさいわね。ちっちゃいころのかわいい彼を見てるのよ。悪い?あぁ~~~かわいい!!カメラ目線、ねぇ、今カメラ目線よっ!!」
「はぁ、なにいっとんや」
あいりは、動画に集中してその時はもう周りの声は聞こえていなかった。
「なぁ、昴これおかしないか?」
「そうね……」
「やっぱ、神谷戦斗とやらに会ったんちゃうかなって」
「えぇ……」
「わいも今の捜索を中断してあった方がええんやないかな」
「その必要はないわ……」
あまりしゃべらない昴が自分の意見をいったので、獣人の彼はびっくりする。
「私が会うから……」
そういって、彼女は立ち去った。





