天使の襲撃
俺は、空中戦に持ち込もうと天使の羽を展開しようとする。
「さっせないよ~!!」
「ッ!!」
三本目の矢が放たれる。考える隙もなく本能で体を逸らして避けた。なぜなら、それはさきほどまでの速度とは比べ物にならないくらい俊敏なものへと変わっていた。風向きや空気抵抗をすべて読み、俺に放ってきたのだ。それは、銃器の速度をも上回っていた。
「お前、ただもんじゃないな……」
「今の避けちゃうセントくんもすごいよ~。あいりの三本目を避けれたのはセント君がはじめてかもぉ~。けれど、あいりよりはすごくないかなっ!!」
「その猫なで声みたいなしゃべり方やめろっ!!!」
俺は、エクスカリバーを抜刀すると同時に、敵の近くの空中にワープする。飛び道具では不利な接近戦へと持ち込もうとしたのだ。自由落下を利用して剣の威力を上げようと考えていたのだ。だが、切りかかろうとした瞬間に俺は気がついた。矢の先が俺に向かっているのを。それは、まるで俺の行動先を予測していたかのように――
「はい、ざんね~ん!!」
それは、至近距離で撃たれた。ハート型の矢じりの先が俺の右胸へと伸びている。矢じりの先端は弓を離れ、空気を鋭く切りながら俺へと近づいてくる。
「くっ!!」
空中では自由に体を動かすことは難しい。だから、俺はエクスカリバーを握っていない左手で横から叩きつけるように掴み取る。
「へぇ~、やるじゃん。けど、あいりめんどくさいこと嫌いだし、早く終わらせたいから余計なことしないでくれないかな」
「ご希望通り、今すぐ終わらせてやるよ」
俺は空中で落下している最中に地面に足をつける前に、森の中へとワープする。地面が見えないくらい生い茂っている木の下だと、空中からは死角になり狙撃の妨げになると考えたのだ。
「あっ、戦斗大丈夫?」
近くの茂みに潜んでいた魔須美が、現れた俺に声をかけてくる。結城やなぎさも木の端から顔を少しだけ出しこちらの様子を伺っている。
「いやっ、まだだ。てか、あいつ結構強いから気をつけろ!!このまま逃げるぞ!!」
「えっ、あいりが、えっ???」
魔須美が困惑しながらついて来る。そういえば、あのツインテール女のこと知っているようだったしな。
「魔須美、あいつ何もんなんだ」
「う~ん、アイドルグループの一人でテレビでよく見るって事くらいしか……」
「もしかしたら、私の勘違いかもしれないんだけど、私ランキング十位内であいりちゃんの名前見たことあるかも」
なぎさがそうつぶやく。
「もしかして、超絶☆かわいい天使あいりちゃんって名前の子のことかい?」
結城も思い出したかのように言う。
「もしそいつだとしたらあんだけ強いのも納得だわ。体制を整えてからもう一度きたほうがいいかもしれない」
俺はそう提案して、帰るための転移用の穴の準備をしようとする。
その頃、
「なによっ!!人が優しくしてあげたら調子乗っちゃって。あいりから逃げられると思ったら大間違いなんだからねっっっっ!!!!!!!見てなさいよ!!!!!!」
あいりは、空中で地団駄踏んだ後、上空へ向けて矢を三本同時に放った。
「よし、準備が出来たから今のうちに行くぞ」
「うん」
俺は先に入るように魔須美に促すと同時に、上の木の葉に何かがぶつかり落ちてくる音が聞こえる。すると、三本の矢が地面に向かって落ちてくるの光景が目に映る。
「魔須美、なぎさ、結城避けろ!!!」
「戦斗?」「えっ?」「ん?」
しかし、俺は遅かった。
「キャッ!!」「ッ……!?」「ウッ……!!」
三人の体を、三本それぞれの矢が貫き、突き刺さっていたのだ。





