聖なる密林
俺たちは、荒廃したビルが立ち並ぶ立ち並ぶ一帯を抜け、元は、国立自然公園だった場所の入り口へと到達する。校長の娘である、流々奈を探しに来たのだ。結局、瑠璃ちゃんと遊香ちゃんはお留守番することになった。
しかし、そこは「危険」や「Danger」と書かれた黄色と黒のトラテープが所狭しと張り巡らされている。なぜ、張られているのかわからないが、ただならぬ気配が感じられる。
「テープ張られてるのは怖いけど、その先はなんか神秘的ね」
魔須美が、奥を覗きこみながらつぶやく。森自体は木々から差し込む光が地上を照らす光景は美しく神々しい。
温帯湿潤気候の日本では生えにくい、熱帯雨林によく生えている多種類の常緑広葉樹が生い茂っている。
元々生息していた国立自然公園の温帯湿潤気候の植物と熱帯雨林気候の植物が同じ場所に存在していて違和感があり、不思議な感覚が芽生える。
「このテープは、なんらかの理由で、政府がこの地域から足を遠退かせるために張っているんだろう。まぁ、なにがあっても流々奈を探すことは確定しているんだ。早速入るぞ」
俺は、先頭だったのでテープをくぐって中へと侵入する。
「あ、戦斗、待って」
「なぎさ、僕たちも入ろうか」
「そうだね」
続けて、三人もテープをくぐってくる。
俺は、周りを見渡してみるが、特に変わったり、気になる箇所はない。
「どんくらい広くなっているかもわかんないし、長丁場になりそうだな。まずは、地理把握のために散策でもしてみるか。ちょうど、この、テープからしばらく真っ直ぐは獣道が、続いてるみたいだしな」
その言葉通り俺らは、獣道に沿って歩くこと、体感四十分、どでかい泉が見えてくる。空が反射したかのような透明に近く、光を反射する様子はまるで磨かれた鏡のようだ。
「なんて、綺麗なんだ」
「うん、綺麗だね」
「どっかの世界遺産みた~い」
結城、なぎさ、魔須美がそれぞれ泉を称賛する。俺は、泉に近づくなり、泉から川へと繋がる岩場を覗きこむ。
「何者かは知らないが、ここで水を飲んだ跡がある。時間はそうたってないからこの近くに潜伏しているかもしれない。十分注意しろ」
俺は、皆にきこえるようにいう。
すると、ガサゴソと葉っぱの擦れる音がきこえる。何かがそこに存在したのだ。もしかしたら、俺たちをそこから、覗いていたのかもしれない。
本来は木が生い茂るために存在しないはずの、ステップ気候に生える長草がそれを知らせてくれた。
「お前ら、ここでちょっと待機してろ!!」
俺はその音の発生源を追うために、走り出した。





