新たなる場所へ
「早く、帰らないとね。遊香ちゃんや瑠璃ちゃんが待ってるし」
「そうだな」
俺と魔須美はあのまま時間を過ごした後に、運動場の出口を抜ける。すると、二つの人影が見える。
「お前ら、どうしたんだ?」
結城となぎさが立って待っていた。てっきり、今いないギャル二人組みたく、自分の家に帰っていったのかと思っていた。
「実は、僕らも合流したいんだけどだめかな?」
結城が申し訳なさそうにきいてくる。話をきくとなぎさも結城も家が崩壊してて家族はいまだに見つかっていないらしい。学校で生活していた理由も納得できる。
「まぁ、俺はどっちでもいいんだけど――」
魔須美の方を見る。
「あたしは、仲間が増えた方が心強いかな。遊香ちゃんや瑠璃ちゃんにもきいてみなきゃだけど……」
「あー、ひとまず拠点に戻るか」
俺らだけで決定出来ることではないので拠点に戻ることにした。
「遊香ちゃん、瑠璃ちゃんただいま!!」
「あっ!魔須美さんが、帰ってきた!!」「ほんとだっ!!」
俺達が拠点に戻るなり、二人の幼女が魔須美の大きい声に反応して抱きついてくる。運動場の後、元気が出るまで時間を潰したので落ち込んでいるようには見えない。もしかしたら、自分より小さい子達に気をつかわせないように空元気を出しているだけかもしれない。
「お、お邪魔します」
「僕もお邪魔します」
俺の後から入ってきた見知らぬ二人に遊香ちゃんと瑠璃ちゃんはキョトンとする。
「今日から、僕たちも仲間にいれてくれないな?」
結城が心配そうに尋ねる。
「遊香ちゃん、瑠璃ちゃんこの二人は俺と遊太のクラスメイトだ。心配しなくていいよ」
二人は納得したかのように、「よろしくお願いします」と礼儀正しくお辞儀をする。
「はじめまして、遊香ちゃん、瑠璃ちゃん。私は、清宮なぎさです。よろしくお願いします」
「僕は、鑑結城です。よろしくお願いします」
新たに入ってきた二人は、自分の紹介をしていく。
俺以外の初対面である全員が話終えたところで、俺は、話を切り出すことにした。
「今後のことについてなんだが、俺は、校長の娘さんを助けにいきたいと思っている」
「戦斗君、校長先生って……、ついさっきまてま戦ってたあの?」
結城が驚きながらきいてくる。
「俺は、話を聞く限り娘さんが変わってしまったのは嘘じゃないと思う。娘さんが変わったことによって、理解にその部分を付け入られ、校長自信も変わってしまったんだと思う」
校長が言うには、ダブマスと現実世界が融合し始めたとき、娘さんはダブマスをプレイしていた。それが、原因でなんらかの作用が働き、娘さんの知能も"獣人"並みになってしまったということだ。
「けど、僕には、まだにわかには信じられないな。隣のクラスにいたあの、牙王流々奈さんがそんなことになっているなんて……」
結城が言うには、同じ学年で隣のクラスの牙王流々奈は校長の言うとおり才色兼備だったらしく、ものすごく人気があり、学園内のアイドル的立ち位置にいたらしい。俺は、顔も名前も知らなかったが。
たしかに、それを聞かされると、幼児並みの知能と言われる"獣人"になってしまったなんて、到底想像もつかない。
「俺は、それに政府がその校長の娘がいる場所を危険視しているのも気になっているんだ」
政府が目をつけているということはそこに何かがあるということだ。俺は、その点も気になっている。
「だから、俺は娘さんを探す旅に出たいと思っているんだ」
俺は、自分の次にやりたい思いを告げる。
「あ、あたしは賛成。いいと思う」
意外にも魔須美が最初に、のってきた、
「戦斗の学校の校長がひどいことしてたのは、正直心の整理ができてなくてまだ許せない。けれど、娘さんに罪はないからあたしは、助けたい」
俺の目を真っ直ぐ見つめている。それは、もうこの世界で犠牲者を見たくないという強い意思が感じられる。
「私も流々奈ちゃんを助けたいと思う」
なぎさも発言する。
「僕は戦斗君に任せるしついていくよ。それに、僕たちがいないと娘さんの顔もわからないしね」
結城がそう言ってにっこり笑う。
「私は、戦斗さんに従うだけです」
「る、瑠璃も!」
遊香ちゃんと瑠璃ちゃんも答える。
「みんな……」
全員一致の意見が出揃った。
「よし、そうと決まれば、明日早速偵察程度にその元国立自然公園とやらを訪れてみるとしよう」
俺たちは、明日の準備や計画に取り組みだした。





