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凍っては溶ける氷


「お父さん!お母さん!お願い目を覚まして」


二人の氷魔法攻撃を走りながら逃げる。あたしの驚愕した声に反応し、戦斗の元クラスメイト達がこちらを振り向く。


「君の、御両親なのか……」


勇者の姿をした彼はこちらを心配したのか駆け寄ろうと目の前の敵を吹き飛ばす。


「くっ……!」

「結城君!?」


しかし、湧いてくる水のように増える敵によってそれは阻まれる。彼を心配した女の子は悲鳴に似たような声をあげる。


「魔須美いい加減、おとなしくさなさい!!」


お母さんの叱責の声が聞こえた。


「お母さん!もうやめて!!」


「政府に反逆しないものはすべて私たちの敵よ。排除します!」


違う記憶を植えつけられているみたいだ。あたしの声は届かない。すぐさま、彼女が作った氷のランスがあたしに向かって降り注ぐ。


「きゃっ!」


雨のように降り注ぐつららを避けていたが、足のバランスを崩し転倒してしまう。


「今よ!お父さん!」


「ブリザードランス!!」


あたしに向かって飛んでくるものが見える。「あぁ、終わったんだあたし」と気がついたら呟いていた。


あたしは、諦めからか、これからの死を受け入れた。顔を背け、きつく目を瞑る。


(ごめんね、お父さん、お母さん助けられなかった)


瞼をきつく閉じたことにより、一筋の涙が頬を伝う。


グサッ!!


肉体に刺さった鋭利な物が物凄いスピードで刺さったことが誰がきいてもわかる音が反響する。しかし、あたし自身に痛みは感じられない。感じるのは両肩に手のような温かいぬくもりがあるだけだ。恐る恐る、目をあける。すると、


「お母さん!!」


氷のランスを胸で受けて血を流している自分の母親の姿があった。


「ど、どうして……?」


状況が飲み込めず、そう問いかける。


「おい、な、なにやって……」


お父さんも驚愕の表情で肩を震わしている。そして、持っていた杖を手から落としそのまま膝から落ちる。


「ごめんね、こんなお母さんで……。魔須美のこと傷つけちゃってたね」


お母さんはさっきまでの血走った様子はなく落ち着いているようだった。


「なんで、どうして……。洗脳されてたはずしゃ……」


「なんでだろうね。魔須美が泣いてるの見てたら思いだしちゃった。赤ちゃんの頃だったり、駄々こねてた頃だったり……。ほんとになんでだろうね」


「お、お母さん!!」


震える肩をあたしは両手で掴む。


「ごめんね、魔須美、時間みたい……」


お母さんの体が光になっていく。


「うそ!うそ!!まだ何にも話せてない!」


「お母さんからお願いいい」


あたしはゆっくり頷く。


「お母さんの願いはただ一つ。娘が幸せであればいいのよ。これからも、元気で、ね……」



そう、笑いながら光となって消滅する。


「お母さん!お母さん!!」


お母さんがいた場所を抱き締めるが空振りとなる。手の風圧をうけて、光の粒子が散らばるだけだった。そこには、なにもない。


「なぜこんなことになったんだ」


声がした方を振り向く。


「復讐をしなくてわ」


お父さんが杖を広い立ち上がっていた。杖を振り上げていた。あたしは、反撃があるのか身構える。


「フローズンワールド!!」


声高らかに唱える。それは、辺り一面を氷の海にしてしまう魔法。地面はピシピシと音をたてながら氷に包まれていく。そして、氷の海は周りにいた信者達も飲み込んでいき、高い樹氷を作っていく。コロシアムを飲み込もうとしているのだ。


「あなたたち、氷漬けにされるわよ!」


あたしは、必死に戦斗の元クラスメイトに呼び掛ける。


「魔須美ちゃん、落ち着いてよくみて。氷はあたしたちを避けているわ」


「えっ……」


よく見ると円状にあたし達を避けているのがわかる。さっきの爆風で吹っ飛ばされ、地面に踞っている戦斗をも避けている。


「お、お父さん!」


お父さんの方を見る。しかし、彼自信も足から徐々に氷に包まれ始めていた。


「えっ、なんで」


「自分はどうやら、あの人に一度は救われて、違う記憶を埋め込まれてらしい。けど、思い出したんだ。自分の大事なものをね」


「だ、だめ!まだ――」


「魔須美、大丈夫。自分達の仇は彼がとってくれると思うから。彼ならうん、きっとそうだ。任せても大丈夫かもしれない」


「なにいってるの!!」


「魔須美、お父さんからも、げ、んきでな……」


氷が全身を覆いつくす。


「いや、待って!!」


あたしは、駆け出したがもう遅かった。




******************



俺は、爆風で吹っ飛ばされたあと、全身を強打しあまりの痛さに踞っていた。自分にヒールをかけて、回復を試みる。


すると、冷気が自分に伝わって、それを肌で感じる。寝転んだまま周りを見渡すと、氷の世界で覆われていた。


校長は、自分にまとわりついた氷を体を激しく動かし落としている。


(ぐっ、痛いけど、先に動かなくては)


俺は、立ち上がろうとするも、まだ、回復が弱く足に力が入らず片足で跪く形になってしまう。


「愚かな屍よ。儂に逆らいおって」


校長は杖を振りかざして次の一手を行おうとしていた。









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