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黒対白 後編


魔方陣の光の集合体によって、上空へと飛ばされた理解を追うため、アイテム"天使の翼"を背中につけた俺は、光が消えた後に残った体育館の天井の穴から勢いよく飛び出す。



「待ってたよ」



はるか彼方の上空で、光線の一斉集中を耐えた理解が黒い羽、"悪魔の翼"を背中につけたまま待機していたらしい。俺を見るなり、撃ち落とそうと両腕で構えていたマシンガンをズダダダと射ちまくってくる。



俺は、方向をすぐに変え、体育館の屋根すれすれを滑るかのように飛翔しかわしていく。けれども、マシンガンの雨は鳴り止まない。



俺は、飛翔しマシンガンの弾をかわしながら、地面を背にしながら相手を見据える。そして、マグナムを展開し、照準を定めて狙い撃つ!


「そんな小細工きくわけがッ……!」


ほんの僅かな時間、マグナムの弾に気をとられてワープして理解の背後をとった俺の存在に気がつかなかった。理解の手が止まる。

その隙にマグナムを捨てた手で、瞬時にエクスカリバーを踊らせる。


一振り、二振り、三振り。


肩口、脚、腕の間接部、"悪魔の羽"と敵を無力化させる部分を集中して斬った。


自分の体を飛ばすアイテムがなくなった理解は翼を失った鳥のように自由落下を受け入れて笑いながら落ちていく。



しかし、屋根に体育館の屋根にぶつかる寸前にワープをして何処かへと消えてしまう。


けれども、俺は焦っていなかった。そうなることを読んでいた俺は、"五感強化"を発動させ既に何処にワープしたかを把握していた。


俺は、地上へとワープし虚空を斬りつける。



「うぐっ、な、なん、で……」



透明になっていた理解は斬られた後、姿を表した。奴は、"透明化"して地上を走っていた。目では見えないけれども俺には全て聞こえていた。



「もう観念しろ。"シロ"のいや、遊太のアカウントを返してもらう」


俺は、エクスカリバーで斬り掛かる。しかし、理解は瞬時にバリアをはって受け止めた。



「待ってくれ!面白い話をしようじゃないか」



俺は、攻撃する手を緩めない。バリアを、叩き続ける。バリアをはっている間に回復もしているのだろう。魔方陣の攻撃の傷が癒えていくのが見える。



「ついこの間までは、この世界は代わり映えしなくてつまらなかった。人は、寝て起きて寝るの繰返し。起きている時間も学校や仕事に拘束される。しかし、安全だ。そこに危険というものはない」


俺は、ワープして後ろに回り込み、斬りかかる。しかし、それも、バリアで、防がれる。相手に攻撃を仕掛けてくるような気配がない。


「実は僕ね。勉強しなくても模試では一位だったし、昔やってた空手や剣道、柔術などの武道では一番だった。誰にも負けたことはない」


俺は、剣で叩き続ける。これ以上、マスクをとった故人の顔で喋らせてはいけない。奴の話術が上手いことを俺はきかされている。奴は、自分の過去話をきかせていようだ。


「僕が一番の世界って退屈だったんだよね。何をやっても一番。本気を出さなくても一番。常にトップに立ち続けることができるこの世界は代わり映えのないつまらない世界。けれど、理由は違えどこの世界に飽き飽きしていた人を見つけたんだよ。彼は幼少期に世界の頂点まで登り詰めたのにその世界を捨てた。理由はわからない。けれど、彼は僕に近い存在だ。そう、それは、僕であり僕じゃない。そんな彼の名前は、……」


バリンッ!


「なにっ!」


俺がバリアを割る音がする。




「俺は俺であっておまえは俺じゃない!」




割れたバリアから剣先を伸ばし、喉を突き刺そうとする。しかし、奴も白い剣を持ち、受け止め、振り払ってくる。


「そして、お前は遊太でもシロでもない。亡くなった人達でもない。ただの"佐藤理解"だ!!」


俺は大振りで、理解の剣を打ち払った。



流石の理解の顔にも焦りが一瞬だけ見えるが、ワープして俺と距離をとる。しかし、ワープの先を読んだ俺は、先にそちらの方向へと駆け出した。



「ッ!」


ワープした先で俺が向かってくるのに驚いた理解はすぐ冷静になりファイアーボールを数個飛ばしてくる。数個の炎の塊は、それぞれ、俺に襲いかかってくる。


だが、俺はそれをものともしない。迫り来るいくつもの球を剣で破壊しながら、理解に接近。それを、理解はバリアで受け止めようとするも、その勢いを止めることはできなくて――。

剣でバリアは破壊され理解は守るものがなくなった。俺はエクスカリバーを理解の、いや"シロ"の腹部に突き刺す。


「うっぐっ……」


苦痛の表情を浮かべる。しかし、気が狂ったのかエクスカリバーを握りだし、自分の腹から動かないように固定しだす。すぐには死なないように回復を自分にかけている。だが、腹に剣が刺さったままの痛みは軽減されるわけでもないので狂っているとしか言いようがない。


「最後にこれだけは、言わせてくれ校長先生もこの世界に絶望して、信者をつかい政府を攻撃しようとしている。テロリストとして僕が覚醒させたことは認めよう。けれど、なぜ校長先生が絶望したかわかるかい?」


にやけながら呟く。


「彼の一人娘が、ダブマスの影響で変わり果てた姿になってしまったからだよ。アハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハ」

「は?それはどういう意……、おいっ!!」


理解は自らに、刺さっている剣を自分の手で心臓へと持っていく。


「うっ!!」


短い言葉をあげた後、数字となって"シロ"の姿をした者は消えてゆく。


「この姿は君たちに返そう」


半分以上が消えかかっている状況で最後に奴は、そう呟いた。やがて、風にふかれて、数字と、"シロ"は何処かへと消えていってしまった。


その場に残されたのが俺だけだとわかったら疲れがどっと出てきてその場に座り込んでしまった。


「はぁ、やっと終わったか」


自然と声が出ていた。理解は結城たちに使いこなせていないと言い放っていた。だが、彼も"シロ"のアカウントを百パーセント使いこなせているとは言えなかった。もっと遊太にはポテンシャルが秘められていた。それを使いこなせていたら俺は負けていたのかもしれない。





「"シロ"お前の世界は俺が守ったからな」





誰に聞かせるわけでもなく、独り言として呟いた……、はずだった。







「そんな悠長なことしてていいのかな?」



聞いたことのある声がして後ろを振り向く。



「お前はっ!!」


「そんな怒んないでよ。ちゃんと言ったよ。この、姿は君たちに返そうって」



結城の友達である想太が立っていた。


「いや~、おみごと。今回は君の勝ちだ。お気に入りの、垢がキルされるなんて思わなかったよ。けど、死ぬってとても楽しいね。もっとも非日常的でスリルがあるよ」


「理解、おまえっ!!」


「あぁ、あくまで、キルされたのは"シロ"であって僕ではなかったからね。まぁ、また遊ぼうよ。今度も面白いの見つけてくるから。それより、今は体育館に、戻ってあげな。なぎさちゃん?だっけ大変なことになってるから。じゃ、またね」


想太の"ものづくり"というスキルを使って俺と理解の間に煉瓦の壁を作っていく。一秒もかからないで理解が見えなくなるが、深追いはしなかった。




理解のなぎさに対する言葉に危機感を覚えたからだ。


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