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勇者 対 唸る鞭 前編


魔方陣から飛び出た光が理解を連れて行ったのを確認したあと、羽を生やした戦斗は彼を追いかけて僕たちからは見えなくなってしまう。


さっきまでの暴風雨のように殺気じみた空間ではなくなったみたいだ。


「どうやら嵐は去ったようですよ、結城殿」


右手には鞭を、空いている左手で眼鏡をクイッとかけ直しながらキャリアウーマンを体現化したような女性が、仕事の確認をするかのような声音で話す。そこには、感情は見られない。


彼女は僕たちの学校の教員だったのに今ではその面影はない。"境花先生だった人"は二重の意味でもう死んでしまったのかもしれない。



「そうだね、僕たちも、闘いを再開しようか……」


僕は、対峙している女性に弱々しく答える。実際に、僕は弱っていたのだ。戦斗が理解と闘っている間も僕たちは闘っていた。


僕は、剣使い。相手は鞭使い。あまりにも分が悪い。近づこうにも、鞭で牽制され、近づけたとしても剣を鞭でおさえられて攻撃の余地がなかった。


僕は、遊ばれていただけだった。


鞭を振るおうと僅かなうねりが鞭の先端に伝わるのが見える。振り上げて攻撃しようとしているのだと予想した。


(攻撃される前に動くっ!!!)


「ハァァァァッ!」



僕は、一気に駆け出し距離を縮める。




「甘い、ですよ!!!」




パシン!!!



「ぐあっっっっっ!!」


鞭が僕の頬をはたく。


鞭は僕の予想とは違う動きをした。確かに、上に上がる瞬間は目で捉えることが出来た。しかし、鞭の先端は僕の顔の高さまで上がった時、まるで蛇が噛みつくように僕に飛び込んできたのだ。


鞭を蛇のように自由自在に操る。まるで、今までは遊びだったかのように今、その鞭は敵意を剥き出しにしている。


もう一度、僕に鞭を叩き込もうと地面を平行移動しながら波のように近づいてくる。


(もう騙されない!)


僕は、鞭を剣で振り払う……はずだった。


鞭は僕の剣をぐるぐるととぐろを巻くように絡まりつく。


「くっうっ」


右に左に上に動かせど全く動かない。


「鋭利な刃物は校則違反なので募集します」


境花先生が釣り竿を引っ張るように後ろに引いたとき、僕の手から剣が離れる。一瞬だった。


パシンッ!


境花は鞭を振るう。僕は、咄嗟にバク転してかわす。しかし、


「ぐっ!」


バク転を終えたと同時に左手に痛みが走る。鞭の攻撃が当たったのだろう。なんとかバランスを崩すことなく、立ち上がりバックステップで距離をとる。


「これで、武器もなにもかもなくなったあなたは無力ですね」


境花は距離をじりじりとつめてくる。まるで、獲物を狙う蛇のように。



「あなたは、なぎささんの力、武器がないと無力なのです」


「!!!」



なぎさの名前を出されて動揺してしまう。


「か、彼女を何処にやった!」


少し声に力が入る。



「あの、銅像は美術室か応接間にでもインテリアとして飾ろうとしたのですが、結局はそこの体育館の倉庫に眠っていますよ」


ただ淡々と事実を話す。そこに、感情はない。まるで、ものを扱うかのように。


「なぎさはものなんかじゃない!!!」


「はぁ、感情的になってしまいましたか。自分の能力を上げてくれるアイテムがなくて怒っているのですね?」


悪びれもなくいってくる。


「くっ……」


しかし、僕の剣は吹っ飛ばされてしまった。

闘う武器はもう残っていない。


「はぁ、どうします?まだ遊びます?それとも、ここで倒れますか?」


早く終わらせたいのだろう。残業をめんどくさそうに愚痴るOLのようだ。


「そのなかに答えは……ないっ!!」



僕は、馬鹿正直に真っ正面から敵に向かっていった。







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