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黒対白 中編


無数の魔方陣から、光が飛び出すその刹那、戦斗の目に映る世界は時が止まったようにゆっくりと変わっていく。世界が遅くなったのではない。戦斗の思考がこの世界のスピードを追い越した。ここを切り抜けるための様々な考えが頭の中を高速で流れていく。あらゆる視点から、これから起こりえる可能性を導きだし最善の手段を考える。



俺と、魔方陣の距離は、約25m。魔方陣の攻撃は届くまで一秒もかからないだろう。



俺が今から猛スピードでバリアを重ね掛けしたとしよう。ぶつかったエネルギーは逃げ場を失い体育館ごと吹っ飛ばしてしまうだろう。


では、同じだけのエネルギーをぶつけてみては、……だめだ。それこそ、全く同じ方向、高さ、大きさでなければどこに飛んでいくかわからない。


(どうすればいい!俺は、どうすれば――!)


あと、コンマ数秒もない。次の一手をすぐに行わなければ手遅れになってしまう。

これ以上の逡巡は許されない。今決めなければ!

正しい選択を!!



(――――いや、待てよ……)



と、その刹那、戦斗はさっきの考えを思い出す。



戦斗は、理解の前に描かれた魔方陣を一瞥したあと、目の前に同じような魔方陣を対角線上の同じ配置に、目にも止まらぬ速さで正確に描いていく。


しかし、その間にも何条もの光の束となった攻撃は迫っていた。


しかし、その光の束が俺の目と鼻の先まで来る直前、最後の魔方陣を描き終わり俺は、呟く。



「エレメント……アタック!!」



その言葉が俺の口から発せられたのと同時に俺の描いた魔方陣から、同じ量、同じ威力の光が理解の光を押し返す。


二つのエネルギーは周りの空気を振動させた。体育館の床は地震のように蠢き、窓ガラスはガタガタと揺れ今にも壊れそうだ。


「くっ!なんだ」

「あらぁ、そっちは大変そうね」


向こう側で戦っていた結城と境花はこちらを一瞬見たあと、自分の戦いへと戻る。


「キャーーーーー!!」

「やばいやばいっしょ!!」


ギャル二人組の一人は甲高い声をあげ頭を抱え込み地面に座り込み、もう一人はあたふたと、まわりを見渡していた。


「おっ、戦斗君!やっとこの体育館、いや、人間ごと木っ端微塵にする気になったかい?」



理解は魔方陣に手を添えながら、自分の攻撃が押されているのに、ずっと見たかった光景にであった子供のようにはしゃぐ。


ぶつかり合って押され合っていた光はやがて、魔方陣と魔方陣のちょうど真ん中くらいで拮抗しあい、そこから動かなくなる。そして、やがて、それらのエネルギーは、新しい逃げ場を見つけようと探しているようだった。上の方の力が拮抗しなくなったのだろうか。上へと逃げようとしていた。


「いや、勘違いしてもらっちゃ困るな。俺は、――」



「お前だけを吹っ飛ばす!!」


俺は、二つのエネルギーが上にいくように魔方陣に添えてる手を動かし、コントロールする。


俺の思惑通り、ぶつかり合っていた二つのエネルギーが龍のように上がっていく。大きい一条の光以外にも小さな光が辺りに散らばり出そうとしていた。



「いいぞぉ!いいぞぉ!世紀末の龍のようだ」


理解は恍惚な表情を浮かべうっとりとしながらその進行先を眺めている。



しかし、俺は、その進行先に"穴"をあける。全ての光の進行方向の先にそれを作り出した。



そう、それは俺たちが、狙撃手に襲われた時と同じ穴。座標を指定すればそこへと通じる穴。



「は?」


理解は光が体育館を壊さずに、ブラックホールのような謎の穴へと吸い込まれていく様子を唖然とした表情で見る。


俺は、理解の足元にたくさんの穴をつくる。吸い込んでいるのがブラックホールだとしたら、これはホワイトホールと説明した方が早いだろう。俺は、それを斜め上方向へと向かうようにブラックホールの数分つくりだす。



「ッ!!」


ようやく、自分のおかれた状況を理解したらしい。ワープして逃れようとする。



「もうやく、"理解"したか? 理解! "シロ"のアカウントを返してもらおうか!!」


しかし、もう遅い。光は一ヶ所に集まり、上へと上がっていく。その一ヶ所とは、理解だった。光の龍は理解を呑み込み、巻き込みながら上へと上昇していく。


「戦斗、おまええええええええええ!!!!」


理解は、鬼の形相で睨めながら体育館の天井を突き破り上へと上がっていく。



しかし、奴は、まだ死んでいないだろう。なんたって奴は、"シロ"の姿をしているのである。




俺は、とどめを刺すためにアイテム"天使の翼"を背中につけ、飛翔し奴を追いかける。

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