白と黒の対峙
俺と結城たちは、"忍者"の四体を倒したあと、順調に教室棟を抜けて体育館の扉の前へとたどり着く。スライド式の扉を開ける前にスキル"鑑定"、"サーチ"などの探索用のスキルを使って調べあげるが怪しいところはなかったので、そのまま開ける。
すると、総面積約千平方メートルほどの体育館の向かって奥側に、人が二人ほどたっている気配があった。
そこで立っていたのは意外にも、カルト教団の秘書かはわからないが、重要なことを任されているであろう、重鎮である鏡花とぼさぼさ頭で眼鏡をかけた理解が立っていた。
「もう、お前たちが殺した信者の数が少なくなったのか?随分と規模が小さいみたいだな」
「いえ、私どもとしてはこれ以上犠牲者を出さないため、私が貴殿方をここで終わらせるべくして参りました」
俺の挑発にも動揺せずゆっくりと境花は答えた。
「そうか。まぁ、お前はどうでもいい。いつでも殺れるからな。俺が、用があるのはその隣だ」
俺は理解と向き合う。まだ、どちらも手を出そうとはしない。
柔道選手も試合が始まってからは直ぐに、手を掴むようなことはあまりしない。手をつかむことから試合がはじまるのだ。自分が投げ飛ばすために有利な場所を掴めるか、また、相手に不利な場所を掴ませるか。
その時点で勝負がついてしまうこともある。まずは、牽制し合い相手の出方を見るのだ。
今の状況はそれに近い。
「やぁ、この姿でははじましてかな?戦斗君。僕は君に会えて嬉しいよ」
「俺も、お前をここでぶっ倒せるって考えたら嬉しいかな」
「そっか相思相愛だね」
理解はにっこりと気持ち悪い笑みを浮かべる。本当にこの状況を心から楽しんでいるようだった。
「お前の目的はなんだ?」
「目的?」
「何かしたいことがあって動いているんじゃないのか?」
「自分が楽しめる刺激が欲しいんだよ」
「刺激?」
「そうさ。代わり映えのない世界は真っ白な画用紙を見せられているようでつまらないじゃないか……。だから、僕はそれに色を付け足したいんだ」
「お前が手を加えることによってカオスな出来になったとしても?」
「混沌は芸術さ。そこには普遍なものなんてない。色、形を変えて僕を楽しませてくれる。君たちだってそうだったろ?普遍だったダブマスのランキングという概念を君たちは壊したんだよ」
彼は、俺ら、"オセロ"がチートを使って一位、二位を独占した。その事を、指しているのだろう。
「"シロ"い画用紙は少しでも"クロ"い色がついてしまったら元には戻らない。闇という黒い色は心に染み付くと薄まることはあっても消えはしないんだよ」
わけがありそうな理解は結城を一瞥する。
「けどね、僕の今の関心は画用紙じゃない。僕が欲しいのはね、全てを塗ってしまい、時には画用紙を壊してしまうほどの道具さ。そう、すべてを"荒らし"まくれる君の力が欲しいんだよ、戦斗くん」
理解は提案してくる。さも、自分が正解だけを述べていると疑わずに。
「この世界を混沌に陥れよう。そして、僕らはそれをいつも上から見てるんだ。どうだい、素晴らしいだろう。きみも一緒に――――」
「悪いが、断る」
俺は、話を蹴った。
「な、なぜ?」
「俺が荒らすのは、お前でいうとこの俺の画用紙を荒らそうとするものだけだ。お前自身にも他の画用紙にも興味はねぇ。けれど、荒らしてきたもんは――――」
「倍返しで荒らしてやるよ!!」
「お前もお前のその糞みたいなロジックも全てを荒らしまくって、"シロ"い白紙に戻してやるよ」
「フッ、ハハ……」
それをきいて、その場に崩れながら笑い出す。
「ハ、ハハハハハハハハハハハ!!!」
まるで、頭が狂ったかのような気味の悪い笑いかたをする。ギャル二人組は勿論、仲間サイドである境花でさえひいている。
「なぁんで、"理解"できないかなぁ?」パチンッ!
ビュゥッと体育館に風が吹き荒れる。彼の周りを数字が包み込む。
「結城!!境花の方は頼む。」
「大丈夫だ。もう、へまはしない。例え、どんな敵でも」
結城の面構えがさっきよりも良くなっている。
「それより、君も頑張ってくれ!絶対に死ぬなよ」
「あぁ……」
俺は、既に走り出した体を止めることなく返事をする。
「白黒つけてくる!!」





