束の間
「ちょっとちょっとすごいじゃ~ん」
「見直したし~」
俺が一瀉千里に、フェンリルを倒してしまった光景を見てギャル二人組がはしゃぎながら近づいてくる。そして、やがて俺の服をつかんでくる。
「やめろ!おい、ひっついてくんな。お前ら今まで避けてただろ」
「いーじゃん!いーじゃん!」とか「あっ、照れてるぅ~。かわい~」とギャルに弄ばれている。それを、遠くから真顔で結城が見つめている。
「おい!結城こいつらなんとかしろ!!早くはがしてくれ」
「いいじゃないか!戦斗君にも春が来たってことだろ。羨ましいよハハハ」
乾いた笑いを浮かべている。俺が、恥ずかしがっていると思ってるのだろう。遠くから眺めてる。俺がはがそうとしてるのはそういうことじゃなくて……
シュッ!!!
壁に成りすましながら潜んでいたのか、黒頭巾と黒装束で身を包んだ者がくないを右手に、こちらに飛び込んでくる。
「だから、言わんこっちゃない!!」
「「キャッ!!!」」
俺は、両腕で二人を巻き込み倒れこむ。重力に身を任せ落ちていく中、足を横にずらすような蹴りをくないを持っている手にくらわせ、くないをぶっ飛ばす。
格好を見るからにジョブは"忍者"だろう。
俺がくないを吹っ飛ばしたのを合図に忍者が三体壁や天井から現れる。これで、計四体が俺の方に向かってくる。
「そうはさせるか!!」
後ろから、結城が剣を振り回し俺らと忍者の間合いに入り、牽制する。忍者はその様子を見て俺らから距離をとる。しかし、相手は狭い廊下の中俺らを囲むようにして、
「サンキュー結城!」
「いや、これくらいは当然だよ。さっきは何も出来なかったからな」
俺はその間に立ち上がり、結城の背後に立つ。俺は、下にへたれこんでるでいるギャルに説教をする。
「おい、いいかよくきけ。忘れてないと思うがこれはゲームだけどゲームじゃない。ここは、戦場であり、リアルなんだよ」
俺の言葉が届いたのか、ごくりと唾を飲み込んだあと、頷いている。ふざけたムードはこれでおしまいだ。
「結城、おまえに背中任せられるか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「結城、よくきけ。校長のジョブは"聖職者"じゃない。"ネクロマンサー"だ。今まで操られていると思っていたのは人間じゃない。死体だ」
「死体?」
「いいか!だから殺すことをためらうな。いくぞっ!!!」
「あっ、あぁ……」
俺と結城はそれぞれの方向の対峙している忍者へと向かっていった。
その時、俺は結城の手が一瞬震えるのを見逃さなかった……。





