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過去をうけて


「そうか、そんなことがあったのか」


黙って結城の話を聞き終えた俺は、そう述べた。


「そうかって、戦斗ならなぎさの事に関してもっと感情的になるかと思っていたよ」


「俺が……?」


「そうだね、ちょっと意外だった」


「別に、話を聞く限りなぎさは捕らえられただけであって死んだわけではないからな」


「石化を戻せるのか?」


「状態異常回復を行えばいいだろう。もしそれがダメなら理解とかいう奴が行った逆のことを行えばいい」


「どういう理屈かはわからないけどわかったよ」


「そうか、話が早くて助かる」


「しかし、本当に、君が話をきいて乱れないのは意外だった。遊太以外に話していたクラスメイトってなぎさだけだったから」


「はぁ、またその話に戻るのか。俺が話しかけてたわけじゃない。あっちから話しかけてきただけだ」


「そうかよっ……」


少し面白くなさそうに結城は呟く。結城は自分の正義のためには思い込みが激しいときがあるらしい。俺がなぎさに付きまとうストーカーだと思っていたのだろうか。なにも嘘は言っていない。俺は、遊太以外には自分から話しかけることはあまりしなかった。


それに、今一番頭の中を巡っているのは、なぎさでも校長先生でもなくシロのアカウントを使うクラスメイトの"佐藤理解"の存在だった。


「なぁ、結城。話は変わるんだが、佐藤理解って奴は死んだプレイヤーの使えるんだよな?」


「そうみたいだね」


「どれくらいの人間がこの世界で死んだかわかるか?」


俺は、WMSに侵食された後、自分の周りのことしか情報をあまり得てなかった。世界情勢、いや、日本がどの程度侵食されたかもこの地区だけしか把握していない。


ただ、一日で植物が育ち、生い茂り建物は風化していたのは街を歩いた所で何度か見かけた。政府もこの状況に軍隊やボランティアを募り、特別処置を行っているのも知っている。想太に化けた理解にはじめて会ったのも政府が提供していた商店街だった。


「テレビやラジオで情報収集している限りだと全世界が侵食されたみたいだ。各国の政府はダブマスのプロプレイヤーを集めて、人々に危害を及ぼすモンスターを倒しているらしい。また、一般市民も参加したら、報酬が貰えるように、モンスターを倒したら報酬が出るギルドなどを作ったらしい」


「ギルドねぇ……」


「プロプレイヤーは日本政府自体がギルドだから手厚い報酬が貰えているだろうね。しかし、オセロの一人であるシロがクラスメイトの遊太君であることには気がつかなかったよ。彼がマスクをずらした時に信じたくなくて思考が停止してたけど、今思えば彼は遊太だったんだね。上位ランカーはみんな政府についていたと思っていたよ」


結城がこの学校で強い部類だったのはそういうことだろう。強いプレイヤーは政府のとこにいってしまう。残るのは戦えないジョブと中級プレイヤーなど。


「そこで、頼みがあるんだ」


「なんだよ」


「シロのアカウントを使える彼はとても手強い。そして、いくら君が勇者で強いと言ってもランキング1,2位を争っていた彼に勝てるかどうかは怪しいかもしれない」


「ん……?まぁそうだな」


「遊太君と仲良かった君なら知っているんじゃないか?だからオセロの"クロ"に会って彼を倒す手伝いをお願いしたいんだ!!」


「はぁっ!?」


なに言ってるんだこいつと俺は、思わず大きな声をだしてしまう。


「"クロ"だって自分の相棒のアカウントを勝手に使われていい気分ではないと思うんだ」


確かに、俺はいい気分ではない。早く、理解とやらに会ってぶちのめしたいと考えている。しかし、結城のこの勘違いはどこからくるのだろう。


俺は、自分の服装を見ていた。そして、気がついた。


マスクとコートはクロ仕様だが、マントが幼少期であるセントのものだった。コートも実は黒一色というわけでもなく継ぎ接ぎのようにセントの服がポツポツと残されていた。


服装が違うので俺をクロじゃないと思ったらしい。じゃあ、逆に一発で気がついた魔須美がすごかったのかもしれない。


「あ~、なんだ。俺は、ダブタスをやりこんでたわけじゃないからオセロとか知らないんだ。だから、すまん。クロのことは諦めてくれ」


「そうか、すまない」


結城は残念そうに呟く。自分がクロであると言ってもメリットがあるわけでもないので黙ることにした。


「まぁ、そう落ち込むな。友達のアカウントが悪用されているのを見過ごすわけにはいかないっていう利害の一致があるからそれが解決するまで俺が協力するから」


「君がどれくらいの実力かは知らないが、一人では太刀打ちできなかった。仲間が増えることは心強い、感謝する」


「あぁ、そりゃどぅも」


「しかし、友達の姿を勝手に使われているかもしれないというのに君は冷静なんだね。早く彼を取り戻したいとは思わないのかい?」


「しつこいな」という喉からでかかった言葉を飲み込む。彼は、悪を見たら見逃すことはせず、体を動かしてしまうタイプなんだろう。シロのアカウントを使われて怒りが全く湧かないわけでもない。しかし、俺の答えは決まっている。




「愚問だな。やることは一つだけだよ。俺が、理解だか校長だか知らねぇが、俺の敵と認識した奴等全部を荒らすだけだ!!!」



「そうか......」


結城は俺の答えに含みがあるような返事をする。


「ちょっと話して間に前からなんか来たんだけど!!」



さっきから黙って後ろからついてきたギャル二人があたふたしまくる。


「そんなん、わかってたよ。いくぞ、結城」


「はぁ、調子良いな。君は」



結城は前を見据え剣を構え直す。二人の共闘がはじまろうとしていた。





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